2013 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリアのゲノムコピー数制御システムの構築
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25850056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渡辺 智 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10508237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / DNA複製 / トランスクリプトーム / メタボローム |
Research Abstract |
淡水生シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942、Synechocystis sp. PCC 6803は細胞あたり複数コピーのゲノムを保持することが知られている。このようなゲノム倍数性は高度好熱菌、放射線耐性菌の他、いくつかの種で報告されており、これらの生物はゲノムのバックアップを常備することでUVや活性酸素によるDNA傷害からゲノム情報を保護し、環境に適応するためのロバストネスを獲得していると考えられる。しかしながらゲノムコピー数を規定するメカニズムや、複数コピーゲノムの複製機構については不明であった。申請者のこれまでの研究からSynechococcus、Synechocystisのゲノムコピー数は培養条件、増殖ステージによって大きく変動することが明らかとなった。本申請ではSynechococcus、Synechocystisのゲノムコピー数制御機構を解明すると共に、これに積極的に働きかけゲノムコピー数の人為的な制御システムの構築を目指す。 ゲノムコピー数の変動には遺伝子発現が深く関与することが示唆されていたため、Synechococcusの各増殖ステージにおける遺伝子発現をRNA-seq法により解析した。その結果、ゲノムコピー数の減少する定常期 (stationary phase) に強く誘導される遺伝子群を同定した。また、同じタイミングで採取した試料を用いてメタボローム解析を行った。ゲノムコピー数の増加する誘導期(Lag phase)では解糖系、TCA回路中間体、アミノ酸、ATP、GTPが多く蓄積し、その後の対数増殖期(Log phase)ではこれらの代謝産物量は安定化した。この結果より、ゲノムコピー数の増加、つまりゲノム複製は代謝と密接に連動して起こることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に沿った研究を進めることができている。Synechocystisを材料とした研究に関して新たな展開があり、当初計画以上の成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqにより同定した定常期に強く誘導される遺伝子群についてその機能を解析する。特に転写制御因子に着目し、これらの欠損株、過剰発現株の表現型、ゲノムコピー数への影響を解析する。一方で培養条件の検討も継続し、コピー数が増減する条件を探す。 Synechococcusのゲノムコピー数が4コピーなのに対し、Synechocystisのゲノムコピー数は約200コピーであることが報告されていたが(Griese and Soppa, FEMS microbiol. lett., 2011)、論文に用いられている株についてFACS解析を行った結果、Synechococcusの2倍から4倍程度であることが示された。Synechocystisは世界中で最もよく使われている淡水性シアノバクテリアであるが、各研究室のラボストレインごとに表現型が異なり、ゲノム配列中に固有変異(SNP、In/del)も多く見つかっている (Kanesaki et al., DNA Res. 2012, Trautmann et al., DNA Res. 2012)。当初目標として、高いゲノムコピー数を持つSynechocystisの単離を設定したが、その最初の段階としてこれらの株に関してゲノムコピー数の変動を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究代表が海外留学中であり、計画していた実験(遺伝子のクローニング、および発現解析)を全て遂行することが出来なかったため、次年度使用額が生じた。 平成25年度に計画していた実験は平成26年度に行う。繰り越し金額はこの実験の消耗品費に充てることとする。
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Research Products
(3 results)