2014 Fiscal Year Research-status Report
ルーメン内細菌が合成する機能性物質による繊維分解菌群の活性化
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25850061
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
真貝 拓三 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (70510254)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ルーメン / 微生物 / 繊維分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの第一胃(ルーメン)内では、摂取された植物繊維は微生物により分解されている。自給飼料を中心として家畜の高い栄養要求を満たすためには、ルーメン微生物による繊維分解機能の改善が重要である。本研究は、繊維分解能力の高いFibrobacter succinogenesを中心とする細菌群集の強化・安定化を目指し、繊維分解菌群が産生している機能性物質の添加効果を評価する。本年度はインドール系情報伝達物質の繊維分解細菌に対する影響を明らかにするために、繊維分解菌群の網羅的遺伝子発現プロファイリングリストから、インドール系物質の産生または応答に関与する遺伝子を抽出するとともに、インドール系物質を繊維分解細菌の純粋培養ならびにルーメン液を用いた試験管内培養系に添加し、細菌増殖、繊維分解ならびに発酵産物に与える影響を評価した。 繊維分解菌群の発現遺伝子探索の結果、オーキシン輸送体ならびにオーキシン誘導型の繊維分解酵素が検出された。これら遺伝子はいずれも繊維分解群集を構成するPrevotella ruminicolaの遺伝子に高い相同性を示した。また、繊維分解菌群に発現しているサイクリック-di-GMP生成酵素の遺伝子はF. succinogenesならびに繊維分解菌群のButyrivibrio fibrisolvensの保有遺伝子であることが明らかになり、F. succinogenesを中心とする細菌群集の情報伝達にオーキシンが関与している可能性が示唆された。 これら細菌の培地に、オーキシンまたはインドールを添加したところ、オーキシン濃度に依存してP. ruminicolaおよびB. fibrisolvensの発酵産物濃度が変化することが明らかになった。これらの結果は、繊維分解菌群における発酵産物の生成経路の選択にインドール系シグナルが影響している可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は繊維分解菌群に対するインドール系物質の影響評価に取り組み、オーキシンが繊維分解細菌の発酵産物生成に影響している可能性を明らかにした。また、今後の研究で評価を予定しているサイクリック-di-GMPが、インドールシグナル系と関連することも明らかにした。サイクリック-di-GMPの添加効果については試験が遅れているものの、繊維飼料多給下におけるシグナル物質や特徴的な生成物特定のチャレンジは予定よりも先行しており、全体として試験は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
繊維分解菌群で産生が推定されるサイクリック-di-GMPについて、繊維分解菌群への影響を解析する。また、それらのルーメン内濃度の推定を見据え、発酵生成物の網羅的な解析も進めていく。 一方で、抗菌物質を産生する微生物は特定に至らなかった。これはF. succinogenesの増殖特性に起因していたためで改良の余地が見込めないことから、その分のエフォートを進行中の試験に集中させる。
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Research Products
(1 results)