2014 Fiscal Year Research-status Report
清酒酵母の高アルコール発酵性メカニズムの解析とその応用
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25850065
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 大輔 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30527148)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 出芽酵母 / 清酒酵母 / アルコール発酵 / RIM15 / メタボローム解析 / UDP-グルコース / グルコース同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
清酒酵母の高発酵性を引き起こすRIM15遺伝子機能欠損変異が細胞内の代謝プロファイルに及ぼす影響を明らかにするために行ったメタボローム解析の結果から、RIM15遺伝子の破壊により、グルコースを解糖/アルコール発酵によって分解する経路が促進されると共に、グルコースをトレハロースやグリコーゲン、細胞壁グルカンの形で貯蔵する同化経路が抑制されることを明らかにした。さらに、RT-PCR法により、RIM15遺伝子の欠損が、発酵初期段階において、グルコース同化経路の初発反応であるUDP-グルコースの合成に関連する遺伝子(フォスフォグルコムターゼPGM2、UDP-グルコースピロフォスフォリラーゼUGP1)の発現を低下させることも見出した。実際に、PGM2遺伝子の破壊やUGP1遺伝子の発現抑制によって、発酵速度を上昇させることを示し、これらの遺伝子発現の抑制が高発酵性の一因であることを証明した。これらの遺伝子発現は、Rim15pの下流で働く転写因子Msn2/4p、Hsf1pの制御下にあることから、発酵環境におけるRim15pの活性化が、Msn2/4p、Hsf1pの活性化を介して、PGM2、UGP1遺伝子の発現を誘導し、グルコース同化を促進することでアルコール発酵を抑制していることがわかった。本経路の欠損により、清酒酵母は他の出芽酵母にない高い発酵性を獲得したのだろうと考えられる。以上の結果から、本研究課題の目的である「清酒酵母の高アルコール発酵性メカニズム」の主たる部分を解明するに至った。また、出芽酵母において、グルコース同化経路の制御が、解糖/アルコール発酵の活性に影響を与えるという新規な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施したメタボローム解析の結果を、前年度までに実施していたトランスクリプトーム解析の結果と組み合わせることによって、本研究課題の主目的である、「RIM15遺伝子の機能欠損」による清酒酵母の高発酵性メカニズムの全体像の解明を達成することができた。また、本メカニズムの他の実用酵母への応用についても、前年度までにバイオエタノール酵母について実施済みであったが、本年度も様々な実用酵母菌株における有効性の検証について着手済みである。さらに現在までに、「RIM15遺伝子の機能欠損」以外の高発酵性メカニズムとしてADR1遺伝子の機能欠損を発見しており(前年度)、以上を総合すると当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究実施計画に則って、本研究課題で見出された高発酵性メカニズムが、清酒酵母以外の実用酵母菌株においても有効であるかどうかを検討し、その成果について論文化を進めていく。前年度までに、バイオエタノール酵母において応用可能であることをすでに実証済みであり、他の実用酵母や異なる発酵環境についても解析を行う。また、清酒酵母の高発酵性メカニズムのうち、主要な「RIM15遺伝子の機能欠損」以外の新規な高発酵性メカニズムについても、その存在と実体を明らかにしていく。
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