2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子タギング変異株の解析による微細藻類の脂質蓄積制御因子の探索と利用
Project/Area Number |
25850068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶川 昌孝 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40594437)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物生理学 / 植物分子生物学 / 藻類分子育種 / 環境応答 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
多くの微細藻は窒素や硫黄成分の欠乏した条件下で、中性脂質のトリグリセリド (TAG)を蓄積することから、バイオ燃料生産の供給源として注目されている。本研究では脂質蓄積が異常となった緑藻クラミドモナス変異体を取得することで、まだ未解明な点の多い微細藻の脂質蓄積誘導の分子機構を明らかにすることを目的とした。薬剤耐性遺伝子をランダム挿入した変異体約2万株のプールから、中性脂質に結合する色素の蛍光強度を指標として、セルソーター分取システムFACSにより脂質を高蓄積する変異体を単離した。このうち、栄養欠乏下で脂質蓄積誘導が低下した変異体No.71をtar1(TAG accumulation regulator1)変異体と改称し、詳細な解析を進めた。この株では硫黄欠乏下および窒素欠乏下の両栄養欠乏下におけるTAG蓄積量が野生型の約30%に低下していた。野生型とtar1変異体の窒素欠乏および窒素十分条件でのRNAseq解析の結果、変異体では窒素欠乏応答に関する遺伝子(ATM4, NRR1, DGAT1, PDAT1など)の窒素欠乏下での発現誘導性が低下しており、栄養濃度のセンシング機構に変異を持つ可能性が示唆された。tail PCR法によるDNAタグ挿入領域の解析により、機能未解明の遺伝子の5' UTRへのタグ挿入があることが確認された。この遺伝子の野生型配列を変異体に導入して発現レベルを回復させたところ、TAG蓄積量は野生型レベルに回復し表現型を相補することが出来た。また野生型との交配による次世代株を作出したところ、当該遺伝子へのタグ挿入と変異表現型が連鎖していた。以上のことから、tar1変異体の原因遺伝子を同定出来たと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラミドモナスTAG蓄積異常株のtar1変異体について半独立栄養条件での窒素欠乏および硫黄欠乏による細胞あたりのTAG蓄積量が低下することを見出した。またその際、細胞内に形成される油滴のサイズおよび油滴数のどちらもが減少することがわかった。一方、TAGと並んで窒素・硫黄欠乏で蓄積することが知られるデンプン量には変化はみられなかった。この結果から、tar1原因遺伝子が窒素と硫黄という複数の栄養欠乏を感知してTAG蓄積量を制御していること、デンプンとTAGの栄養欠乏下での蓄積メカニズムに異なる部分が多いことを示すことが出来た。 tar1変異体の原因遺伝子はリン酸化ドメインを保持していた。この遺伝子産物がリン酸化活性を持つことを示すために、リン酸化ドメイン部分を大腸菌において組換えタンパク質として発現精製させ、活性評価の準備を整えた。 tar1変異体の相補株では、原因遺伝子の発現レベルと栄養欠乏下でのTAG蓄積量が正の相関性を示すことがわかった。この遺伝子を過剰発現させることで半独立栄養条件での脂質蓄積量を野生株よりも増大させられる可能性があり、研究目的の一つである誘導性プロモーターによる脂質生成の制御を行う上で有用な候補遺伝子であると考えられる。 以上のように、主要な研究目的である栄養欠乏による藻類の脂質蓄積制御因子の候補を取得し、その機能解析を進行しているので、達成度を表記の通り判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
tar1遺伝子産物がリン酸化活性を有することを、精製した組換えタンパク質を用いたin vitroリン酸化アッセイにより示す。自己リン酸化や人工基質に対するリン酸化活性を有することが示された場合、窒素欠乏培養を行った変異体と野生株間での経時的なリン酸化プロテオミクス解析により、TAR1タンパク質のリン酸化標的を探索する。標的候補タンパク質については、α-スクリーン法によってTAR1タンパク質によるリン酸化の有無を検証する。また、既に構築済のDNAタグ挿入変異体ライブラリーから、標的タンパク質のコード遺伝子に対する挿入変異体を探索・単離し、tar1変異体との表現型の共通性を検証する。以上の研究から、未解明のTAR1因子の下流の分子機構について明らかにしていく。またFACSによるTAG蓄積異常の変異体スクリーニングを継続し、TAR1遺伝子の発現が変化した変異体を探索することでTAR1の上流に位置する因子の同定を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度受入額のうち、物品費1,900,000円、旅費100,000円、謝金0円、その他0円としていたが、実支出額は物品費1,123,868円、旅費171,200円、謝金0円、その他545,745円であり、その残額が159,187円となった。 残額159,187円については、翌年度分請求額と合わせて物品費あるいはその他支出項目として使用する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Difference in cesium accumulation among rice cultivars grown in the paddy field in Fukushima Prefecture in 2011 and 2012.2014
Author(s)
Ohmori Y, Inui Y, Kajikawa M, Nakata A, Sotta N, Kasai K, Uraguchi S, Tanaka N, Nishida S, Hasegawa T, Sakamoto T, et al.
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Journal Title
J. Plant Res.
Volume: 127
Pages: 57-66
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Roles of Pollen-Specific Boron Efflux Transporter, OsBOR4, in the Rice Fertilization Process.2013
Author(s)
Tanaka, N., Uraguchi, S., Saito, A., Kajikawa, M., Kasai, K., Sato, Y., Nagamura, Y., Fujiwara, T.
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Journal Title
Plant Cell Physiol.
Volume: 54
Pages: 2011-2019
DOI
Peer Reviewed
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