2014 Fiscal Year Research-status Report
転写開始点と翻訳制御の網羅的解析を通じた高温条件下における翻訳制御機構の解明
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25850069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松浦 秀幸 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10596232)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | CAGE / シロイヌナズナ培養細胞 / 翻訳制御 / 転写開始点 / CAP構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、mRNAの翻訳状態をその正確な5'端近傍配列と同時にゲノムワイドに決定すること等を通じて、通常条件や高温ストレス条件の植物細胞における翻訳制御機構の分子メカニズムの解明を目指す。昨年度は、Cap Analysis of Gene Expression (CAGE) 解析に供するRNA試料の調製とCAGEデータの取得に取り組み、通常培養条件および高温ストレス条件にて培養したシロイヌナズナ培養細胞より調製したpolysomal RNA (ポリソーム画分に存在するRNA)及びtotal RNAに由来するCAGEデータを取得した。そこで平成26年度は、主に取得されたCAGE解析結果のデータ解析に取り組んだ。その結果、解析したRNA試料に含まれるcap構造を有するmRNAの5'末端位置に関して、塩基レベルで再現性を有するデータを取得できていることが確認された。また、各遺伝子について転写開始点(mRNAの5'末端位置)のばらつきを評価したところ、遺伝子によってばらつきの程度が大きく異なっていること、ばらつきの程度はtotal RNAとpolysomal RNAで類似していること等が明らかとなった。このことは、転写の段階で生み出されたと考えられる転写開始点の異なるmRNAは、ほぼそのばらつきを維持したままポリソーム画分に移行していることを示唆している。一方で、転写開始点ごとの翻訳状態(polysomal RNA/total RNAの比率)を詳細に比較すると、同一遺伝子に由来すると考えられるmRNA種であるにも関わらず、転写開始点が異なるmRNA種間で、翻訳状態が大きく異なる例が多数見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、① mRNAの翻訳状態をその正確な5'端近傍配列と同時にゲノムワイドに決定すること、② ゲノムワイドデータを活用した生物情報科学的解析により、当該翻訳制御を規定する5'-UTR 5'端近傍領域内シス制御因子を探索し、変異解析等により特徴付けすること、③トランス制御因子候補遺伝子の翻訳制御における機能や役割の解析、にある。CAGEデータを取得し、データの詳細な解析の過程において多くの困難に直面し、研究項目①に想定よりも多くの時間を要している。そのため、②及び③については検討が進んでいないのが、本研究の主目的である①については、着実に進展しているため、全体としてはやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、研究項目①に集中し、転写開始点のばらつきが翻訳に与える影響を、一過性発現試験や安定形質転換体を用いたレポーターアッセイにより評価していく。
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Causes of Carryover |
CAGE解析より得られたシークエンスデータの解析に、当初の計画以上に時間を要した。そのため、当初計画していた実験を十分に実施できなかった部分がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CAGE解析より得られた結果に基づいて、実験的に検証する5'非翻訳領域(5'-UTR)を抽出し、当該5'-UTRがレポーター遺伝子の翻訳に与える影響を評価するための実験等の経費に充てる予定である。また、これら成果を投稿論文あるいは学会にて発表するための諸経費としても使用予定である。
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Research Products
(5 results)