2015 Fiscal Year Annual Research Report
転写開始点と翻訳制御の網羅的解析を通じた高温条件下における翻訳制御機構の解明
Project/Area Number |
25850069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松浦 秀幸 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10596232)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | CAGE / シロイヌナズナ培養細胞 / 転写開始点 / 翻訳制御 / 環境ストレス / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シロイヌナズナ培養細胞を材料に、同一タンパク質をコードするmRNAの5'末端位置のゆらぎ(転写開始点のゆらぎ)と、当該mRNAの環境ストレス条件下での翻訳制御の関係性をゲノムスケールで明らかにすることを目指した。転写開始点のゆらぎに関する情報は、過去に実施したCap analysis of Gene Expression (CAGE)解析により獲得したものを利用した。環境ストレスによる翻訳状態変化に関する情報は、Matsuura et al. (2010)に報告されたDNAマイクロアレイ解析により得られた、環境ストレスによるmRNA翻訳状態変化に関する情報を利用した。CAGEデータより転写開始点のゆらぎの程度を示す指標値を、マイクロアレイデータより高温及び高塩ストレスによる翻訳状態変化の程度を示す指標値を、遺伝子ごとに算出しその関係性についてゲノムワイドに検証した。その結果、主に以下のような結果が得られた。転写開始点のゆらぎが小さい遺伝子群には、・タンパク質合成関連遺伝子やヒストン関連遺伝子、・ストレスによる翻訳抑制の程度が弱いものから、中程度のもの、極端に強いものまで幅広い応答を示す遺伝子が含まれており、かつ高温と高塩ストレス下で、抑制の程度が異なるものが多い。一方で、転写開始点のゆらぎが大きい遺伝子群には、・キナーゼ類やモータータンパク質であるキネシン等のシグナル伝達に関連する遺伝子、・高温・高塩ストレスどちらにおいても中程度の翻訳抑制 を示す遺伝子が多く含まれる傾向にあり、翻訳抑制の程度が極端に弱いあるいは強いものは少ない。以上の結果は、転写開始点のゆらぎが植物の多様な環境変動に応答しうる堅牢かつ柔軟な翻訳制御システムの基盤となっているという、新たな遺伝子発現制御システムの存在を強く示唆する。
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Research Products
(2 results)