2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
黒木 勝久 宮崎大学, 農学部, 助教 (20647036)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / 硫酸体 |
Research Abstract |
[I]プロスタグランジン硫酸体の調製法確立 プロスタグランジン硫酸転移酵素SULT7A1発現誘導大腸菌(BL21)を用いて硫酸体の作成を試みたが、組み換え大腸菌による硫酸体産生を確認することができなかった。代替法として計画していた精製酵素を用いた酵素反応による硫酸体作成およびHPLCによる硫酸体の調製法を確立することができた。酵素反応の条件は、シクロペンテノン型プロスタグランジンの一つである15d-PGJ2の基質濃度を50 uMに、硫酸基供与体であるPAPSの濃度を50 uMに、pHをBis-tris propane bufferで9.5にし、30℃で3時間反応することで最も効率よくプロスタグランジンを硫酸化することができた(基質の80%以上が硫酸体に変換していた)。また、15d-PGJ2のほか、Δ12-PGJ2の硫酸体もHPLCを用いて精製することができた。精製した硫酸体を質量分析計を用いて解析した結果、プロスタグランジンのシクロペンテノン環に硫酸基が付加した構造であることが明らかとなった。 [II]プロスタグランジン硫酸体の受容体探索 RT-PCRを用いた分子クローニング法により、11種類のプロスタグランジン受容体のうち、プロスタグランジンE2受容体やD2受容体など10種類の発現系を構築することができた。さらに、プロスタグランジンD受容体を始めとした2種類の受容体のヒト腎臓細胞株(293T細胞)における一過性発現を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画[I]のプロスタグランジン硫酸体の調製法確立を行うことができた。当初は、PGA2の硫酸体調製を目指していたが、PGA2の硫酸体はHPLCのダイオードアレイ(190-800 nm)では検出できなかったため、検出することのできた15d-PGJ2の硫酸体の調製を目指すことにした。15d-PGJ2も生体内に存在するプロスタグランジンの一つであるため、PGA2硫酸体の代替えとして15d-PGJ2硫酸体を使用することは、本研究計画のプロスタグランジン硫酸体の機能解明には何ら支障がないと判断した。また、大腸菌を用いた硫酸体産生を計画していたが、プロスタグランジン自体が大腸菌により代謝を受けていることが分かり、かつ、硫酸体の産生も確認できなかったことから、酵素反応を用いた調製法を行った。酵素反応による硫酸体への変換効率も80%以上とよい効率であることから、大腸菌を用いた調製法の代替法としては、満足いくものであると判断した。また、平成26年度に予定していた単離・精製した硫酸体の構造解析を平成25年度に実施できたことから、当初の計画以上に研究が進展している。 一方、研究計画[II]のプロスタグランジン硫酸体の受容体探索においては、10種類のプロスタグランジン受容体の発現系を構築することができたが、残り1種類の発現系構築には至っていない。また、哺乳細胞内におけるプロスタグラン受容体の一過性発現確認も2種類しか確認できていない。そのため、全プロスタグランジン受容体の発現構築および発現を目指した当初の計画からは、少し遅れている。 以上の理由から、研究計画[I]は、予定よりも研究が進んでいるが、研究計画[II]は少し遅れているといえるため、研究計画は全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
発現系構築の済んでいないプロスタグランジンE2受容体1(EP1)の発現系構築を行うほか、ヒト腎臓細胞株(293T細胞)への一過性発現を確認していない受容体に関しても発現確認を行う。次に各々のプロスタグランジン受容体(DP, EP1-4, FP, IP)をヒト腎臓細胞株(293T細胞)に発現させ、当初予定していたPGA2の代わりに単離生成することのできた15d-PGJ2硫酸体を処理し、細胞内cAMP産生とCa2+濃度変化を測定することで、15d-PGJ2硫酸体のリガンド活性の解析を行う。つぎに、各々のプロスタグランジン受容体のリガンド存在下で、15d-PGJ2硫酸体を作用させ、細胞内cAMP産生とCa2+濃度変化を測定することで、15d-PGJ2硫酸体のアンタゴニスト活性の解析を行う。さらに、15d-PGJ2硫酸体特異的な受容体探索を行うべく、硫酸体アビジンビーズの調製を行い、マウス小腸膜画分から、15d-PGJ2硫酸体特異的に結合するタンパク質を調製し、タンパク質電気泳動による分離・検出後、そのタンパク質バンドを切り出し、トリプシンを用いてペプチド断片へと消化させ、そのペプチド断片を質量分析計により解析し、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)法により、その結合タンパク質の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画[II]のプロスタグランジン硫酸体の受容体探索では、遺伝子クローニングと細胞培養実験が中心であるが、研究計画[II]の進行の遅れで細胞培養実験をほとんど行っていないため、この実験に使用する予定であった培養細胞実験試薬の購入が予定より少なかったため。 発現系構築の済んでいないプロスタグランジンE2受容体1(EP1)の発現系構築を行うほか、293Tへの一過性発現を確認していない受容体に関しても発現確認を行う。この実験に際し必要な、各種生化学試薬・培養細胞実験試薬の購入を、前年度からの繰越金で使用する。 その後は、当初の計画通り、ヒト腎臓細胞株(293T細胞)を用いたプロスタグランジン受容体(DP, EP1-4, FP, IP)に対する硫酸体の作用を評価すべく、生化学試薬および培養細胞実験試薬のほか、cAMP測定試薬やCa2+濃度測定試薬に使用しながら、研究を行っていく。さらに、プロスタグランジン硫酸体の結合タンパク質解析を、電気泳動や質量分析解析といったプロテオミクス関連試薬および生化学試薬に使用予定である。
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Research Products
(1 results)