2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
都築 毅 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00404848)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管新生 / 共役脂肪酸 / がん / 共役リノレン酸 / 共役EPA / 共役DHA |
Research Abstract |
天然には様々な脂肪酸が存在する。分子内に共役二重結合を有する共役脂肪酸は、抗癌作用を始め様々な生理機能を持つことが報告されている。申請者は以前、天然型共役脂肪酸であるエレオステアリン酸(ESA)や共役エイコサペンタエン酸(共役EPA)、共役ドコサヘキサエン酸(共役DHA)に強い癌抑制効果があることを世界で初めて発見した。その時、共役脂肪酸を投与したマウスの癌組織では、内部が変色し、壊死を起こしていた。これは癌組織内部にまで栄養が行き届いていない状態であり、栄養を運ぶ血管が新生されていないと考えられた。よって、共役脂肪酸に血管新生を抑制する可能性が考えられた。 血管新生は既存の血管から新たな血管ができる現象であり、内皮細胞の増殖、遊走および管腔形成の3過程を経て進む。この現象は癌、動脈硬化、糖尿病性網膜症、リュウマチ性関節炎などの多くの難治性疾患の発症と進展に深く関与する。たとえば癌の場合、新生血管から栄養を受け取ることで増殖し、この血管を通って転移する。近年、血管新生をターゲットとした癌治療が注目を集めており、さらに血管新生病の食品成分・食品素材による予防は大きな社会的関心の的である。そこで、共役脂肪酸の血管新生抑制効果を検討し、共役脂肪酸は強い血管新生抑制効果を有することを世界で初めて明らかにし、共役脂肪酸の癌抑制機構の一つとして腫瘍血管新生を阻害することを明らかにした。そこで、このような成果を基礎にして、天然由来の共役脂肪酸を腫瘍血管新生を予防する成分として臨床に応用するのに十分な情報をそろえること、また、共役脂肪酸をはじめとした血管新生抑制活性をもつ様々な食品成分に着目し、活性やメカニズムを比較し、有効な組み合わせを見出し、血管新生をコントロールする食事を提示することを目標に、「腫瘍血管新生を予防するための食品開発に関する研究」と題して研究内容を深化発展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、強い血管新生抑制作用をもつ共役脂肪酸の検索とその実用性を細胞培養試験や動物実験で明確にする。これまでの研究で、癌細胞を移植したヌードマウスに共役脂肪酸を経口投与すると、癌組織の著明な退縮作用をもたらすことを見出し、この癌組織退縮の機構として共役脂肪酸による血管新生阻害作用を明らかにしている。そこで平成25年度は、天然由来の様々な共役脂肪酸(エレオステアリン酸、プニカ酸、ジャカル酸、カレンディン酸、共役EPA、共役DHAなど)による血管新生抑制活性やそのメカニズムを培養細胞実験系で明確にし、比較した。方法は、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を用い、これをコラーゲンゲル間サンドイッチ法で三次元培養して管腔形成を評価した。これに、共役脂肪酸を作用させ、管腔形成の増減から血管新生阻害作用を調べた。管腔形成阻害作用を確認できたら、管腔形成時に観察される血管内皮細胞の増殖、遊走に共役脂肪酸がどのような影響を与えるのか調べた。細胞増殖はWST-8を用いて色素還元法を行い、細胞遊走は傷つけ法およびボイデンチャンバー法を用いて評価した。これらを確認した後、内皮細胞からmRNAを抽出・精製して蛍光ラベル化後、DNAマイクロアレイと定量RT-PCR法により血管新生の阻害メカニズムを評価した。また、タンパク発現量も抗体アレイとウエスタンブロット法にて測定した。そして、共役脂肪酸のターゲット分子において、阻害剤やsiRNAを用いてその分子の寄与を明確にした。これらの方法を用いて、共役脂肪酸の活性やメカニズムの比較を同一の試験系で行い、活性の高いものの検索を行った。また、血管新生抑制作用が報告されている他の食品成分と、血管新生阻害活性やそのメカニズムを比較することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、共役脂肪酸(活性が高かった異性体)の作用を生体モデル(in vivo)で評価する。方法としては、初めにマウス背部に誘導された腫瘍血管新生に対する効果を調べる(マウス背部皮下法)。マウス背部の皮下で形成される血管網を評価することで、血管新生への活性成分の影響を評価する。癌細胞を移植したヌードマウスの腫瘍成長に与える影響や付随して起こる血管新生への影響を調べる。ヌードマウスで良い結果が得られたら、正常マウス(ICR)を用いた移殖癌動物試験を行い、より一般性を高める。 また、共役脂肪酸の吸収代謝や安全性を長期の動物試験(正常マウスやラットを使用)を行うことで明確にし、血管新生阻害物質としての臨床試験へ応用するのに十分な情報を揃える。 加えて、前年度の結果を基に、より高い血管新生抑制効果を得ることができる食品成分の組み合わせを検討する。初めに、細胞培養試験で評価し、有望な組み合わせを動物試験でも明らかにする。さらに、ヒトへ応用しやすいように、有望な活性成分が多く含まれる食素材を食餌に混ぜて動物試験を行い、より食品に近い状態での効果の確認を行う。そして、有望な食素材を選定していき、最終的には血管新生をコントロールする食事を提示する。 本研究により、食素材に含まれている共役脂肪酸を活用することで癌、動脈硬化、糖尿病性網膜症、リュウマチ性関節炎など生活習慣病の根幹である血管新生病の予防に役立たせ、高齢社会の健康に貢献する。
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