2014 Fiscal Year Research-status Report
低タンパク質栄養によるアディポネクチン増加機構の解明とその生理的意義
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25850095
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
鈴木 由香(豊島由香) 日本医科大学, 付置研究所, 講師 (70516070)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アディポネクチン / タンパク質栄養 / エネルギー消費 / インスリンシグナル / 耐糖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低タンパク質食摂食によりアディポネクチンが増加する機構とその生理的意義の解明を目指し、恒常性維持に果たすアディポネクチンの役割を明らかにすることを目的とする。平成26年度は、低タンパク質栄養状態に応答したアディポネクチン増加の生理的意義を明らかにするために、アディポネクチン欠損(KO)マウスに低タンパク質食を給餌した際の代謝変動を解析した。 6週齢の野生型(WT)もしくはKOマウスに、コントロール食として15%カゼイン食、低タンパク質食として5%カゼイン食を14日間自由給餌した。まず、実験食給餌10日目に耐糖能試験を行ったところ、低タンパク質食給餌によって起こる耐糖能の変化はWTとKOマウスで同等であった。また、実験食給餌15日目に麻酔下で下大静脈よりインスリンを注入し、15分後に肝臓を採取して、インスリンシグナル因子のリン酸化量を測定した。その結果、WTマウスの肝臓では、低タンパク質食給餌によってシグナル因子のインスリン依存的なリン酸化の増強が起こっていた。KOマウスの肝臓でも、WTマウスの場合と同様にインスリンシグナルの増強が観察された。 さらに、実験食給餌10日目から3日間、酸素消費量(VO2)を測定した。その結果、WTマウスでは低タンパク質食給餌によってVO2が有意に増加したが、KOマウスではこの増加が抑制された。 以上の結果から、低タンパク質食給餌による血中アディポネクチン量増加は、低タンパク質栄養状態によって起こる耐糖能変化や肝臓インスリンシグナルの増強には関与しておらず、VO2の増加に必要であることが明らかとなった。したがって、低タンパク質栄養状態におけるエネルギー消費の亢進は、血中アディポネクチン量の増加を一部介して起こると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、研究は進んでいる。低タンパク質食摂食によるアディポネクチンの血中濃度の増加が、低タンパク質栄養状態で起こるエネルギー消費の亢進に必要であることが明らかにできたので、目標は達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通りに進める予定である。 今後は、まだ全容を明らかにできていない、低タンパク質栄養状態に応答したアディポネクチン増加機構の解明を目指す。 昨年度までに、低タンパク質食給餌による血中アディポネクチン量の増加は脂肪細胞からの分泌促進もしくは血中での分解抑制によって起こること、さらに、利用できる必須アミノ酸の低下を脂肪細胞が直接感知して起こるのではないことを明らかにしている。 したがって、今後は、低タンパク質食摂食による血中アディポネクチン量の増加に分解抑制が関わっているか検討する。また、低タンパク質食給餌によって起こる肝臓の脂質蓄積量の増加が間接的に血中アディポネクチン濃度の増加に関わっているか、主として内分泌系の関与の可能性を検討する。
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Research Products
(1 results)