2013 Fiscal Year Research-status Report
地形解析に基づく土地生産力モデルの新たな方法論的展開とその検証
Project/Area Number |
25850112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
光田 靖 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30414494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地位指数 / 樹高曲線 / スギ / ベイジアンキャリブレーション |
Research Abstract |
スギを対象樹種として、どのような場所で成長が良いのか、地形との関係を解析した。宮崎大学田野演習林において、様々な林齢のスギ人工林に試験地を設定して樹高を計測した。また、高精度GPSを使って正確な地理座標を取得した。試験地の地理座標を利用して、試験地について直達光の強度および土壌水分の集まりやすさの観点から地形解析を行った。それぞれの試験地で上位3本の樹高を平均したものを上層木樹高として、スギの成長の良さを計る指標とした。この上層木樹高を地形と林齢から上層木樹高を推定するモデルを開発した。その結果、直達光の強度が弱く、土壌水分の集まりやすい地形でスギの成長が良いことが分かった。また、地形解析を広範囲に行うことによって、スギの成長が良い場所を推定することが可能となった。 上層木樹高を地形と林齢から推定するモデルの開発に先立って、地形から土地の良さ(地位指数)を推定するモデルと、地位指数と林齢から上層木樹高を推定するモデルとを、ベイズ統計学を利用した新しい統計手法により結合する手法を開発した。 新たに開発した手法を利用して、地形から地位指数を推定するモデルを開発した。宮崎大学田野演習林のスギ人工林を対象として、2011年に撮影されたデジタル航空写真から高さ情報を抽出し、地盤高データとの差分から樹高を計測した。そのデータを用いて、地位指数を推定するモデルを開発した。現地調査を行ったモデルと同様の傾向となったが、モデルの推定精度は劣るものとなった。これは地盤高データに含まれる誤差の影響で樹高が正しく計測できなかったことによると考えられる。さらに、林野庁が実施した森林資源モニタリング調査のデータを利用して、九州全体について地位指数を推定するモデルを開発した。対象範囲が九州全体と広くなったことから、地位指数を地形だけで十分に説明することはできず、気象の影響が大きいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに林齢から上層木樹高を推定するモデルと、地形から地位指数を推定するモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法の利用により結合して、地位指数を推定する新たな手法を開発した。これまで地位指数を推定するためには決まった林齢(40年や50年)のデータしか用いることができなかったが、この手法を用いることにより上層木樹高、林齢および地理座標の測定値があれば、どのようなデータでも地位指数推定モデルの開発に用いることができるようになった。 この成果を利用して、スギを対象として、試験地データおよびデジタル航空写真測量データを用いた地位指数モデルの開発を計画通り行った。さらに、林野庁が森林資源モニタリング調査データを公開したことから、そのデータを利用した地位指数推定モデルの開発を行い、計画以上の成果を得ることができた。一方で、カラマツに関しては、職場を移籍した初年度で見通しが立たないこともあり九州大学北海道演習林での現地調査の日程調整が上手くいかなかったこともあり、モデルの開発は次年度に行うこととした。しかし、既存現地調査データの整備、デジタル航空写真測量による樹高データ整備および地形解析については今年度に終了しており、九州大学北海道演習林における現地調査を行えば、すぐにモデルの開発が可能となる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の反省を踏まえて、九州大学北海道演習林との日程調整を早期に行って現地調査を行い(4月23日時点で調整済み)、カラマツについてスギと同様の解析を行う。また、開発したモデルについて、検証データにあてはめてモデルの検証を行う。なお、スギについては検証データも取得済みであり、カラマツについては昨年度予定の調査と検証データ取得のための調査を同時に行う。 モデルの検証結果に基づく精度比較およびモデル開発にかかる費用、労力および時間といったコスト比較の両面から、地位指数推定モデル開発のためのデータソース選択について得失を明らかにする。 データの取得およびモデルの開発を9月には終了し、年度の後半は学会発表(10月に国際学会発表予定)や論文発表による成果の公表を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高精度GPSを購入する予定であったが、所属組織内に購入予定機器の所有があり無償で利用することが可能となったので、研究費をより有効に活用するため購入を取りやめた。予算は不足していた測量機器の購入や、解析ソフトのアップデートにあてたが、それでも残額が生じることとなった。 繰り越しに関しては、九州大学北海道演習林での調査費用にあてる予定である。昨年度できなかった調査と今年度予定の調査の両方を行う必要が生じたことから、調査に必要な労力が大きくなる。調査期間を計画よりも延長し、また調査人員を計画よりも多くすることで対応することが必要となったため、その経費に繰り越し分をあてる計画である。
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