2013 Fiscal Year Research-status Report
イオン顕微鏡を用いた元素イメージングによる木質細胞壁形成過程の研究
Project/Area Number |
25850120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 美由紀 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20378912)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞壁 / 安定同位体 / 二次イオン質量分析法 / 元素イメージング |
Research Abstract |
本研究では、木部の細胞が細胞分裂によって生じてから細胞壁完成までに要する時間とその過程である各細胞壁成分堆積のタイミングを明らかにすることを目的としている。広葉樹木部形成において、細胞の位置とその細胞壁がいつの光合成産物に由来して、いつ堆積したものかを関連づけることを目指す。安定同位体標識した二酸化炭素の投与と二次イオン質量分析法による同位体イメージングを用いることにより、取り込まれた安定同位体標識の細胞壁内における分布を測定できることが、これまでに申請者らによって確かめられた。そこで平成25年度は、炭素の安定同位体13Cで標識した二酸化炭素をポプラ若木に投与し、投与からの経過時間と標識13Cの樹木体内での分布を調べた。その結果、今回の実験条件においては、13C標識二酸化炭素投与後24時間以内に細胞壁層内に13C含量が顕著に増加した層が形成されており、経過時間に伴う細胞壁内の13C含量の増加が見られた。このことから、投与された標識二酸化炭素由来の炭素の一部は速やかに幹木部に輸送され、濃縮した状態で細胞壁成分として木部細胞に取り込まれて層を形成したことがわかった。一方、24時間後でも葉のデンプン粒内には高濃度の13Cが検出された。これらが後に木部に輸送されて細胞壁構成として堆積する可能性があるが、先に示した明瞭な層状の13C分布が光合成による13C標識二酸化炭素取り込み時期を直接に反映していると考えられる。また分化中の木部細胞からは、細胞質内の13C濃度の増加が検出された。未だこれらの標識の特定細胞小器官等への分布を示すには至っていないものの、標識二酸化炭素由来の同化産物が活発に木部細胞内で代謝されると考えられる時間帯が推測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
13C標識二酸化炭素の投与からの経過時間と標識13C木部細胞への取り込みの関係について知見を得ることができた。さらに次年度に予定している細胞内分布に関する予備的情報が得られた。しかし、13Cで標識された細胞壁構成成分の同定については遅れている。そのため達成度を(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
光合成による13C標識二酸化炭素吸収後の経過時間に伴う、13Cの細胞壁への堆積進行について情報が得られたため、今後は標識13Cを含む成分の同定を行う。また、標識二酸化炭素由来の同化産物が活発に木部細胞内で代謝される時期を捉えた試料を作製して、13Cの細胞内分布解析と微細構造の電子顕微鏡観察と合わせて行い、細胞内における代謝や細胞壁への輸送について明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞壁の成分分析に関する実験が遅れており、使用予定であった樹脂、試薬等の支出が発生しなかったため、これらに相当する分が次年度使用額となった。 H26年度には、新たな安定同位体標識植物の作出と、それらにおける安定同位体標識の分布解析、また細胞壁成分の同定のための実験を行う。そのため、経費は主に安定同位体標識物質や試薬、樹脂や消耗品等、新たな試料調製と測定のために使用する。また国内学会に参加するための費用に使用する予定である。
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