2013 Fiscal Year Research-status Report
モノコンポーネントセルラーゼによるイオン液体処理セルロースの酵素分解性評価
Project/Area Number |
25850122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
水野 正浩 信州大学, 工学部, 助教 (60432168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | セルラーゼ / イオン液体 / 再生セルロース / 酵素分解 |
Research Abstract |
微結晶性セルロースを、3種類の異なるイオン液体([Emim][OAc]、[Emim][DEP]、[N221ME][Ala])を用いて溶解させた後、脱イオン水による再析出を行うことで得られた再生セルロースの酵素分解性を評価した。酵素には白色腐朽菌Irpex lacteus由来のセロビオヒドロラーゼ I、セロビオヒドロラーゼ II、エンドグルカナーゼを麹菌にて異種発現させたものを用いた。いずれの単一酵素を用いた場合でも、未処理セルロースと比較すると分解率は向上した。特にエンドグルカナーゼによる分解率の向上が大きかった。また、2種類の単一酵素を組み合わせた場合では、単一酵素で作用させた場合よりも、相乗効果が認められた。特に、セロビオヒドロラーゼIとIIのエキソ型酵素の組合せよりも、エキソ型酵素とエンドグルカナーゼを組み合わせた場合において、高い相乗効果が認められた。更に、実バイオマスとして草本系植物であるナガエミクリを用いて、イオン液体の処理効果及び酵素分解性についても評価を行った。イオン液体で植物細胞壁を処理すると、処理時間と共に、ヘミセルロースやリグニンが取り除かれセルロースの結晶面が露出してくることが偏光顕微鏡観察より明らかとなった。更に処理を行うと、セルロース繊維がほぐれていく様子が観察され、最終的には結晶面が消失し、溶解した。脱イオン水の添加によって得られる再析出物の市販複合酵素剤による分解率は、未処理と比較し8倍ほど高くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、純セルロースのイオン液体処理再生セルロースに対し、Irpex lacteus由来の3種類の単一酵素およびその組み合わせで作用させた場合の試験を行うことができた。イオン液体中におけるセルロース鎖の挙動解析の進展がやや遅れているものの、当初の計画では最後に行う予定であった実バイオマスのイオン液体の処理効果についても検討できたため、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、白色腐朽菌I. lacteus由来の単一酵素を用いて実験を進めてきたが、他の生物が生産する酵素についても、今回得られた結果が当てはまるのかについて検討を進める必要がある。具体的には、不完全性子嚢菌であるPestalotiopsis由来のエンドグルカナーゼを新たに精製し、I. lacteus由来のエキソ型セルラーゼとの相乗効果について検討を行う予定である。また、実バイオマスにおいても複合酵素剤でのイオン液体処理効果が確認されたため、単一酵素を用いた試験を行い、最適な酵素分解条件の検討を行う予定である。一方、初年度に実験を計画していたセルロース溶液からの再生方法の検討については、26年度に当初の計画通りアルコール類を中心に検討を行い、酵素分解性の評価を進めていく。また、本研究によって得られた成果については、学会発表以外に、論文としても発表できるように進めていく。
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