2014 Fiscal Year Research-status Report
担子菌由来の揮発性メタボライトをトレーサーにした新たな腐朽探知法の確立
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25850126
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
小沼 ルミ 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部環境技術グループ, 副主任研究員 (90463075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | MVOC / 木材腐朽菌 / 腐朽診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に検討した木材腐朽菌由来の揮発性有機化合物(Microbial Volatile Organic Compounds:MVOC)の分析手法の中から,微量揮発性成分の分析に適した手法を用いて,今年度は,木材腐朽菌が実際に木材を分解する際に放散するMVOCの分析を行った。具体的には褐色腐朽菌F. palustrisおよび白色腐朽T. versicolorを供試菌として木材サンプルを腐朽させ,その際に放散されるMVOCについて吸着剤を用いたアクティブサンプリング法によって捕集し,加熱脱着装置付GC/MS分析で同定した。MVOCの分析は木材腐朽の段階ごとに測定しており,木材サンプルの腐朽程度は質量減少率により数値化した。その結果,木材腐朽菌では木材を代謝することでMVOCのような二次代謝産物の合成系が活性化されることが示唆された。さらに,供試した褐色腐朽菌と白色腐朽菌では産生するMVOCの特徴が異なることが示された。平成24年度および平成25年度に得られた研究成果をまとめ,今年度は学会発表2件(国際学会1件含む)を行った。なお,現在論文投稿中(1件)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は木材腐朽菌が産生する揮発生代謝産物を木材腐朽の早期発見のためのマーカーとして用いることを目指すものであり,今年度は腐朽菌の成長段階ごとに産生されるMVOCのキャラクタリゼーションを目指した。そこで,褐色腐朽菌および白色腐朽菌が木材(ブナ辺材)腐朽時に産生するMVOCを生育段階ごとに測定し,揮発生代謝産物の放散パターンが木材の腐朽段階に依存していることをつきとめた。また,栄養培地(ポテト・デキストロース寒天培地)で腐朽菌を生育させた際のMVOCと木材腐朽時のMVOCを比較することで,供試菌において、木材腐朽時により多くのMVOCを産生し、菌種によってMVOCは異なる放散パターンを示すことを明らかにした。ただし,今年度実施した培養法によると針葉樹材において腐朽が進まないことがわかった。住宅の構造材には針葉樹材が用いられることが多いため,腐朽菌が針葉樹材を代謝する際のMVOCを明らかにする必要があり,これについては来年度に実施を予定している。 以上のことから,本研究の目的に対して現在までの達成度をおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
針葉樹材を腐朽した際のMVOCを測定し,腐朽時に特徴的な化合物を探索するために,針葉樹材の主な腐朽原因である褐色腐朽菌を用いて腐朽時MVOCの特徴を明らかにする。また,平成24年度および平成25年度に明らかとなった木材腐朽菌由来のMVOCについて,担子菌の代謝経路から産生メカニズムについて解析をおこなう。さらに, 住宅内におけるMVOCの捕集方法について検討する。
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Causes of Carryover |
急遽必要な試薬や器具類の購入を迅速に行うことを目的に経費を全額使用することを控えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は針葉樹材を腐朽させた際の揮発性代謝産物の測定を行うため,木材サンプルの購入を行う。さらに,揮発性代謝産物の定量化するため各種試薬の購入にあてる。
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Research Products
(2 results)