2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850132
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠井 久会 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (50399995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 魚類ウイルス / ヘルペスウイルス / 腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,サケ科魚類に感染して肝炎と基底細胞癌を引き起こすOMV (Oncorhynchus masou virus; SaHV-2) を対象に,前回の科研(若手B, 課題番号22780168)で明らかにした全ゲノム情報をもとに感染魚における包括的高感度遺伝子発現解析を展開し,宿主の発癌誘起機構の解明することを目的とした。OMV はアロヘルペスウイルス科のウイルスで,魚類で初めて発見された癌ウイルスである。このウイルスは1978年に分離されて以来,わが国の増養殖現場で猛威を振ってきた。病気に強いシロサケに高い死亡率を示す唯一のウイルスであり,本ウイルスによる病原機構の解明は,サケ科魚類の増養殖における安定的生産に必須である。 本年度は,腫瘍が確認されたサクラマス (Oncorhynchus masou) 親魚14尾の各臓器を対象にウイルス分離及び遺伝子の検出を行い、潜伏感染部位の推定を試みた。最も分離率の高い部位は腫瘍であり,脳も14尾中6尾から分離されたが,その他の臓器からの分離率は低かった。PCRでは全ての臓器からOMV特異遺伝子が検出されたが,陽性率は臓器毎に差が認められた。腫瘍が最も陽性率が高く,次いで脳や視神経で高い陽性率を示し,OMVが神経系に潜伏感染している可能性が示された。さらに腫瘍組織および脳におけるウイルス遺伝子の局在をin situハイブリダイゼーション法により明らかにした。加えて,腫瘍組織を対象にした包括的高感度遺伝子発現解析を実施するためのRNA-seqデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍組織を対象にした包括的高感度遺伝子発現解析を実施するためのRNA-seqデータを取得済であり,本研究の目的である宿主の発癌誘起機構を明らかにするために解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
OMVサクラマス分離株およびギンザケ株を用いた感染試験により作出した感染耐過魚にも腫瘍の形成が確認され,同様の解析を実施する計画である。
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