2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850134
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細谷 将 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60526466)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トラフグ / ゲノミックセレクション / Genotype by sequencing / 高成長 / 寄生虫症耐性 |
Research Abstract |
海産魚類の養殖は歴史が浅く、革新的な育種法の開発が求められている。近年、遺伝子の情報を利用したゲノム育種が注目されているが、養殖魚にはほとんど系統が無いことがハードルと考えられてきた。しかし、一塩基多型(SNP)に注目したゲノミックセレクションを応用することで、世代を重ねた系統作出を経ることなく、天然魚から優良親魚を直接選抜できると考えられる。しかも、ゲノム配列が解読されていない種にも応用できる。本研究はトラフグを材料に、ゲノミックセレクションを行うための基礎的知見を得ることを目的とし、天然魚からの直接選抜法の確立を目指す。 平成25年度は、野生トラフグから得た交配集団を用いて、子の生残率、成長に関わる親魚の遺伝的影響力に関する基礎データを得た。メス親由来の影響は、親魚の生理性状の影響が卵質に対して強い影響力をもつために評価できない。また、水槽間のばらつきなど環境要因による影響も大きい。そこで、母性効果と水槽効果を排除して、オス親由来の影響力を評価できる系を確立した。すなわち、複数のオスを1尾のメスと交配して得た半兄弟家系を同一水槽で飼育し、のちに遺伝マーカーによる親子判別を行って水槽内の相対生残率、標準化体長を比較する方法である。この方法により、上記の2つの要因を統計学的に排除できる。25年度の実験では、4尾のオスに由来する半同胞家系を作出して実験を行った。また、親魚の組み合わせの影響を考慮するため、4尾のメス親を用いて繰り返し実験を行った。その結果、メス親を問わず、特定の1尾のオス由来の家系が生残率、成長ともに好成績を示した。広義の遺伝率はそれぞれ60%程度と高い値を示し、家系選抜の有効性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、天然魚から優れた個体を探し出し、それを創始個体とした育種を行うための基礎的知見を得ることである。表現型として成長とへトロボツリウム症耐性に注目した。 海産魚はランダム交配が続いており遺伝的に均一であると考えられており、また同じような選択圧が掛かっていることから、野生個体の間で質的な差が見つかるのかは不明であった。25年度の実験で、驚くことに4個体のオス個体の間にさえ子の生残率と成長に対する遺伝的な差が検出された。すなわち、海産魚でも野生個体は表現型の多様性に富んでいることが示された。一方、寄生虫症耐性に関しては、感染実験を行ってサンプリングを行ったが、遺伝解析を行うに至っていない。早急に解析を行い、結果を得るように努める。 以上、寄生虫症耐性について解析が行えなかった点で少し遅れているといえるが、生残、成長に関する遺伝的影響力に関する重要な知見を得られた点で、概ね順調な進捗状況であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、寄生虫症耐性に関する解析を終了させる。次に、用いる親魚数を増やして好成績を示す家系を複数得て、候補家系を作出する。一方で、ゲノミックセレクションに用いるマーカーを得るためにGenotype-by-sequence法によるSNP取得とアソシエーション解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に大規模家系での実験を予定していたが、施設利用者の増加から規模を縮小せざるを得なかった。そこで、当該年度は、家系差を評価するための実験系を確立し、詳細な遺伝解析を行うことと、次世代シーケンサーを用いた解析のプラットホームの立ち上げに専念した。そのため、予定していた次世代シーケンサーによるゲノム解析を行うに至らず、次年度の計画に入れた。 26年度は大規模家系による解析が行える見通しである。次年度使用額を、次世代シーケンサー(Illumina, Hiseq2500)を用いた全ゲノム解析2ランとRAD-seq2ラン(合計100万円程度)にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)