2013 Fiscal Year Research-status Report
餌料用動物プランクトンの行動解析および自動飼育技術の構築に関する研究
Project/Area Number |
25850136
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
遠藤 雅人 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (80397075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 増養殖 / 餌料生物 / ワムシ / 行動解析 / 自動培養 |
Research Abstract |
供試生物にS 型ワムシ八重山株を使用し、ワムシの行動解析(個体密度、速度、加速度、回転角速度)と培養水中の環境因子(溶存酸素濃度、pH、非解離アンモニア濃度および餌(微細藻類)密度)の同時計測を行うことでこれらの関連性について把握した。その結果、培養水中の非解離アンモニア濃度とワムシの遊泳速度との間に負の相関があることを明らかにした。 また、自動培養装置を運用するための動物プランクトン行動解析システムおよび動物プランクトン培養システムを開発し、運用を行った。本装置は画像解析による個体密度の計測を、画像計測における最適密度にするため、培養水を自動で希釈して動物プランクトンを計測するシステムを装備している。また、個体数増加量に応じて換水による動物プランクトンの回収と注水を自動で行い、さらにプランクトンの個体密度に応じて濃縮した植物プランクトン(クロレラ)を自動で供給する機能も有する。実際に本装置を用いて行動解析データからワムシ計数を計数し、条件に応じて換水、回収および給餌の作業を行う自動運転を行った。自動運転の設定は手動で行う培養と同様とし、2回/日の給餌で個体密度が1000個体/mLを上回った時点で1000個体/mLとなるように1回/日の間引きを行う設定とした。 2週間の培養を2回行った結果、自動培養装置は培養期間中、ほぼ正常に動作した。自動計数と手動計数の差は、0.6±8.2%および0.3±5.2%となった。また、ワムシの回収量は80Lの培養水で培養した際に4.03×10^8 個体(湿重量 647g)および4.92×10^8 個体(湿重量 789g)となった。同様の条件により手動で行ったワムシ培養時の回収量は3.78×10^8個体(湿重量 609g)であったことから、自動培養装置を用いたワムシ培養で、従来の間引き培養と同等のワムシを回収できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究により、装置清掃以外の作業をすべて自動で行うことの出来る動物クランクトンの培養装置が開発できた。さらに、人間がこれまで顕微鏡下で行っていた計数作業も24時間のモニタリングが可能となった。本研究がやや遅れた理由に関しては画像解析装置の光源にワムシが蝟集し、最大10%程の過大計数となったことが判明したためである。この対策として赤色光を用いて蝟集を抑制する方法を検討している。実際の培養に関して何ら支障はないが、ワムシの計数を基にした研究における高精度化は必須であると考える。そのため、出来る限り係数の誤差を減らす計数条件を見極める実験を行う。これにより、高精度の画像解析装置の確立とその運用により動物プランクトン培養における新知見の創出やそれに基づく新たな培養方法の構築を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
赤色光による計数精度の高度化を図った後、人間の作業では不可能と考えられる自動培養装置独自の環境制御や給餌法を確立する。具体的には4時間毎の計数を給餌量に反映し、これまで手作業では2回/日程度であった給餌回数を6回/日に増加させる。また、環境制御により、高濃度酸素の利用や高密度培養についても検討を行う。同時に、ワムシでは一次培養(増殖生産)および二次培養(栄養強化)時の検討を行い、二次培養の栄養強化には数種の栄養強化剤を使用してその効果を検証する。アルテミアではふ化から栄養強化までの期間で検討を行う。使用する行動解析システムには、過去の研究助成により、既に完成している装置および平成25年度に購入したものを用いる。二次培養については効率よく栄養素を取り込ませるための栄養素の供給制御やその他の環境制御について検討を行う。これまで二次培養においては栄養強化剤による餌料生物の活力低下が問題となっているため、行動解析により栄養強化の行動への影響についても把握を行う。また、それぞれの条件下において生産されたワムシおよびアルテミアの栄養分析を行い、各条件の及ぼす栄養組成への影響を明らかにする。具体的には一般組成(水分、粗タンパク質、粗脂肪、灰分)、アミノ酸および脂肪酸組成について比較を行う。さらに平成27年度に行う動物プランクトンを海産魚類の稚魚へ供給する装置の開発を行い、これに設備備品費を用いる。旅費については関連研究施設への視察や学会発表を行うための経費として計上している。
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Research Products
(2 results)