2013 Fiscal Year Research-status Report
テンジクダイ科でみられる卵黄をもたない卵の生産の適応的意義の解明に向けて
Project/Area Number |
25850137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
久米 元 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (00554263)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口内保育 / 卵生産 / 実効性比 / テンジクダイ |
Research Abstract |
テンジクダイの雌は卵黄をもたない卵を生産するが、申請者はこれが本種に特有の性役割が逆転した社会、すなわち、雄による卵食リスクが極めて高い状況下で進化した雌の適応的戦略(卵食を防ぐために、エネルギーをかけることなく見かけ上サイズの大きな卵塊を産出)であるという仮説を提唱した。本研究の目的は、仮説の検証に向けてまず、これまで観察されたことのない本種の野外での生態について詳細に記載した上で野生個体群の実効性比を精査し、本種で性役割が逆転しているのか明らかにすることである。 これまでに、大村湾内に設置した調査海域内でテンジクダイの出現状況、群れの形態、口内保育、摂餌方法等について記載することができた。多くの同科魚類が生息する岩礁、サンゴ礁域と異なり、本種は捕食者から体を隠す構造物が全く存在しない砂泥域に分布、出現していた。昼間はアナゴ類が遺棄したと考えられる砂泥中の巣穴内に潜んでおり、本種はそうすることにより外敵からの捕食を防いでいると考えられた。日没後現れ、中~底層でアミ類、ヨコエビ類を中心に摂餌しているところが観察された。当初の予想に反し、同科のクロホシイシモチにみられるような高密度の群れは一貫して形成しておらず、摂餌中を含めほぼすべての個体が単独で出現していた。口内保育個体もまた単独で見られ、繁殖ペアは交尾後すぐに解消されるものと推察された。一方、口内保育中の雄は昼間も比較的高い割合で中~底層に出現しており、これに伴う被食率の高さが雌への実効性比の偏りを引き起こす一つの要因となっている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潜水観察により、これまでに分かっていなかったテンジクダイの生態(出現状況、群れの形態、口内保育、摂餌方法)について詳細に記載することができた。今後も継続して調査を実施し、本種で性役割の逆転が生じているのか検証を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本種で性役割の逆転現象が生じているのか、必要であれば飼育実験を並行して実施することにより逐次データを補完していく。同様の戦略を持つことが分かった近縁種についても野外調査を実施し、種間比較を行い、さらなる仮説の検証をすすめていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画段階で予定していた調査回数を少なくし、また、1回あたりの調査日数も少なくしたため、実際に使用した旅費が少なくなった。また、潜水調査の際にバディに支払う調査協力費を当初は「人件費・謝金」に計上していたが、「その他」で支払ったため、「人件費・謝金」での使用金額が計上されなかった。 概ね当初の計画通り研究を進めるが、調査回数および1回あたりの調査日数をともに増やし、野外調査・実験を遂行する。対象種と同様の繁殖生態を示すことが分かった近縁種に対しても同様の潜水観察調査を実施し、比較対象とする。研究成果について、国際学会等で速やかに公表する。
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Research Products
(2 results)