2013 Fiscal Year Research-status Report
経営実験を用いた篤農技術のイノベーション伝播過程に基づく総合支援手法の開発
Project/Area Number |
25850148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
安江 紘幸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産基盤研究領域, 特別研究員 (40508248)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公共農業経営学 / ビジネスモデル / 篤農技術 / 農業普及 / 経営実験 |
Research Abstract |
本研究は、技術に秀でた公共意識の高い農業経営者らが新たに展開するビジネスに関わりつつ、経営実験フレームに基づき戦略・計画・管理プロセス立案のための総合支援手法を開発し、日本固有の知識・知恵を将来の担い手教育に生かすためのイノベーション伝播過程を解明する。 25年度の成果は、①経営実験手法の導入協力者を設定し、これまでの戦略・計画・管理プロセスについてヒヤリングを基に農業技術の伝播過程について検討したこと、②その評価に際しては、伝える側と伝えられる側との相互の関わりに着目し、ヒヤリング調査時および対話の内容をテキスト化したこと、③栽培こよみや作業日誌、外部での活動日誌等の記録を収集し、公共性を踏まえた経営実験フレーム(公共的農業ビジネスモデル)のプロトタイプを構築したことである。 具体的には、研究協力者のU氏が主宰する稲作栽培技術研修会のOJTに参加し、出穂後10日経った主宰者U氏(福島県須賀川市)の圃場視察時に参加者である農業者らがU氏からどのような手解きを受けているか、それについてどのように応対しているかを探るために主宰者にはヘッドカメラを着用してもらい、伝える側と伝えられる側の会話や所作を記録した。また、もう一人の研究協力者であるK氏と関連のある6社の圃場視察兼稲作栽培技術研修会へ参加し、田植え20日後の活着程度や分げつについて、指導的立場のK氏が他の農業者へどのような解説や助言をしているかについて記録した。加えて、これら6社と関連会社2社への経営調査を実施し、法人間でどのように技術や理念を共有しているかについても調査を実施した。 以上の調査結果に基づき、公共的農業ビジネスモデルの特徴とその成立条件について整理し、日本農業経済学会神戸大会にて個別報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行にあたり、研究協力者からの最新の情報提供や生産者及び関係者の理解・協力が得られたため、スムーズな調査を実施することが可能であった。この背景には、調査実施前より研究協力者との密な連絡のやり取り、日程の調整、調査対象者との密なコンタクトを実施してきたことが大きいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は事例分析に基づき、農業ビジネスモデルと公共性の関係について考察し、それを踏まえて地域のマルチステークホルダーマネジメントについて検討する。さらに、条件不利地域における農業ビジネスモデルの類型区分を公共的視点に基づいて整理するとともに、それぞれのステークホルダーとの関係について理論的検討を行う。実態調査は、H25年度と同様に継続実施して作業日誌などの作業技術データや経営データを取得する。また,広域連携販売会社を構成する農業経営7社に対して連携関係の構築過程や参加継続条件に関する聞き取り調査と、農業技術の研修会や役員会などの経営戦略会議等の参与観察を行う。さらに,調査結果や収集資料の整理・分析を通じて、ステークホルダーマネジメントの内容・類型、経営成果(収益性、安全性、効率性)に対する効果を、農業経営7社のプロファイルとともに関連付ける。以上の分析結果を基に作成した公共的農業ビジネスモデルに対しては現地関係者の評価を仰ぎ、経営実験による公共的ビジネスモデルの理論化を行う。そして、これらの研究成果については、随時、農業経営・経済学等の関係学会において発表し、学会誌に論文投稿していく。なお、調査協力者に対しては、H26年度上半期にH25年度の調査結果・収集資料を取りまとめた研究成果報告書を作成して成果の還元を図る。
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