2014 Fiscal Year Annual Research Report
直接支払いを伴うコメの生産調整の制度設計に関する研究
Project/Area Number |
25850150
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
住本 雅洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (40596087)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 農業政策 / 生産調整 / 米作の構造改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の米作は昭和40年代前半に供給過剰が顕在化して以降、生産調整と調整分の補填で米作農家の所得を維持してきた。こうした制度が、小規模農家を温存し、大規模農家の規模拡大を阻害した場合、米作の構造改革と矛盾する可能性がある。 本研究の課題は、米作の構造改革と整合的な生産調整のあり方について検討することである。平成22年度から導入された戸別所得補償制度(平成25年度は「経営所得安定対策」と改称)は、生産調整に参加することが制度加入の要件である。したがって、「直接支払と生産調整のセットに対する選択制度」であるとみなすことができる。本研究では、当該制度を分析するためのモデルを構築し、(1)先行研究を批判的に検討した上で、シミュレーション分析によって、(2)当該選択制度の参加率の変動が米価と地代に与える効果を推計し、(3)米作農家の所得に及ぼす影響を分析した。 分析結果は次のとおりである。 (1)「戸別所得補償制度は米作の構造改革と整合的である」と結論づけた先行研究に対し、機会費用(戸別所得補償制度に加入するために実施した生産調整によって失われた米作所得)を無視した帰結であることを指摘した。その上で、制度参加の機会費用を考慮した場合、戸別所得補償制度は大規模層よりも中規模層に手厚い制度であり、米作の構造改革に逆行した制度あることを実証した。 (2)(1)の結果をふまえ、シミュレーション分析によって、当該制度の参加率の低下が米価と地代の下落に及ぼす影響を推計した。その結果、参加率が現行の半分程度まで低下した場合、米価は2年目以降から、地代は3年目以降から安定化に向う。 (3)(2)の場合、5年目まで累計した米作所得は2ha未満層では負であり、農地の貸付け誘因が増加する。その分を3ha以上層が借受けた場合、米作所得は増加して、構造改革が促進される。
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Research Products
(2 results)