2014 Fiscal Year Research-status Report
国際農業交渉における主要国の交渉戦略に関する計量研究
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25850152
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
外園 智史 九州産業大学, 経済学部, 講師 (40611570)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農産物価格変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、WTO農業交渉やFTA、TPP交渉に代表される、現在進行中の国際農業交渉について計量分析を行い、主要輸出入国の受ける影響と、貿易交渉における主要各国の戦略について考察することである。そしてその分析結果から、各国の貿易交渉における戦略とその背景を明らかにし,日本の交渉戦略について提言を行う予定である。 本年度は、まずTPPと農業復興の可能性についての研究をとりまとめ、学会において討論を行った。この討論では、TPPなどの貿易自由化が、本当に期待されているほど農業の規模拡大や生産性の向上をもたらすかどうかについて議論を行った。 次に昨年度から研究を進めていた国際農業交渉の現状に加え、これまで進展してきた農産物貿易自由化によるわが国農産物価格変動の変化について明らかにした。この研究では、比較的早い段階から貿易自由化が進んでいる大豆を事例とし,国際価格と輸入価格および国産落札価格について,価格の変動の度合いを計測し,国際価格や輸入価格が国産落札価格へ与える影響について検討した。その結果,国産大豆の落札価格は、輸入大豆価格から有意な影響を受け、比較的乱高下が激しいことが明らかになった。参考として、関税割当制度などで保護されている小麦についても計測した結果、小麦においては,国産落札価格の変動は国際価格や輸入価格と比較して小さかった。つまり,安易な貿易自由化の進展は,国内農産物市場の価格変動リスクを高める可能性があり,関税の削減については慎重な姿勢を保つ必要があることを明らかにできた。これらの成果は、日本の交渉戦略を考察するうえで、資料となりうるものと考えられる。 これらの結果を踏まえ、次年度には、国際農業交渉における主要国の交渉戦略に関する政策シミュレーション分析を行い、所期の目的を達成する見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度若干遅れ気味であった国際農業交渉の現状の把握を含め、過去の貿易自由化によるわが国農産物価格変動の傾向などを順調に明らかにすることができた。これらの成果は若干公表が遅れているものの、公表手続等は順調に進められている。今後はこれらの研究成果をもとに、交渉戦略に関する政策シミュレーション分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は交付申請時の計画通り、なるべく早い時期に、国際農業交渉における主要国の交渉戦略に関する政策シミュレーション分析を行う予定である。また、その結果を踏まえ、各国の貿易交渉における戦略とその背景を明らかにし,日本の交渉戦略について提言を行う。またこれらの成果を着実に公表し、さらなる研究上の課題などについて、討論を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究討論のための学会が、本務校近隣で行われ、予定よりも旅費を抑えることが可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度初めから積極的に学会や研究会に参加し、討論を進める予定である。
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Research Products
(1 results)