2013 Fiscal Year Research-status Report
内生的な温暖化適応品種選択を内包する多地域動学的応用一般均衡分析:緑茶を事例に
Project/Area Number |
25850154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
阿久根 優子 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (90363952)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フードシステム / 新技術普及 / 応用一般均衡分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は,緑茶を対象に温暖化対応品種の選択メカニズムを内包した多地域動学的応用一般均衡モデル(DCGEモデル)を用いて,温暖化とその対応技術導入による農業,食料関連産業及び複数の地域経済への影響を定量化することである。 具体的には次の2点である。1つは,温暖化とその対応技術の経済効果である。本研究では,茶葉生産の資本ストックの1つが樹木であることを踏まえ,1時点ごとに収束させる逐次動学モデルと異時点間での最適化行動を内包する異時点間動学モデルの2つの比較により,農業生産における温暖化に対する生産者の時間の捉え方の違いから生じる経済的影響を定量化する。もう1つは,温暖化の中での競争状態の差異による経済的な影響を測ることである。これは,実際の緑茶の地域内・地域間の生産リンケージの競争状態を踏まえたものであり,温暖化が進行する中での競争状態の際による農業,食料関連産業や各地域経済への影響を明らかにする。 2013年度は,従来品種と新品種の代替性を想定し,温暖化適応品種選択の構造を導入したモデルの作成を行った。これに際して,CGEモデルのセミナーにて専門家と構造や導入方法について議論し,得たコメントを反映させた。また,複数の競争状態を入れたプロトタイプモデルの結果を学会報告し,現実への適用に関する有益なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は品種選択構造を導入したモデルを作成するとともに,複数の競争状態を入れたプロトタイプモデルを作成した。品種選択構造の導入にあたっては,CGEモデルの専門家からモデル構造に対する指摘を受け,それを反映した。得た指摘の中には,今後のモデル拡張に対するコメントが含まれる。また,プロトタイプモデルによる結果を学会報告することで,現実への適用についても2014年度以降の改善につながるコメントを得たためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は,主に次の2つの拡張と改良を行う。1つは,完成予定のモデルに合わせた用いる社会会計表(SAM)の拡張である。もう1つは,2013年度にセミナーや学会で得たコメントを踏まえ,2013年に別モデル内に作成した品種選択構造をプロトタイプモデルに反映させることである。 なお,モデルについては次の3つである。第1に,豪州のMONASHモデルで用いられているDixon and Rimmer(2002)の逐次動学構造をモデルに導入する。第2に,Diao and Somwaru(1997)やBohringer and Welsch(2004)にしたがって,ベースラインの年を定常状態と想定した異時点間の最適化行動の構造をモデルに導入する。最後に,逐次動学モデルと異時点間動学モデルの結果を比較し,生産者の温暖化に対する捉え方の違いによる緑茶生産への経済的な影響を定量的に示す。 2015年度は,2014年度に構築したモデルの現実への適用に関する検討と修正を行う。 両年度とも,得られた結果を適宜学会で報告し,そこでの議論によって研究の質を高めるとともに,成果を論文発表することに努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,年度当初に予定していなかった英語プレゼンテーション支援ソフトを購入したので,収束計算ソフト(GAMS)のアップデート分が不足し,それを2014年度分と合わせて支払うことにしたために生じた。 なお,英語プレゼン支援ソフトは文章を音声化するものであり,それをもとに予行演習することにより海外での学会報告の質の向上のために購入した。また,作成したモデルはプロトタイプであり,完成予定のものより小規模であるため,既存のGAMSのバージョンで研究を遂行することが可能であった。 2013年度の「次年度使用額」は,2014年度分受領額と合わせて,2013年度にアップグレード予定であった収束計算ソフト(GAMS)の購入にあて,2014年4月末にその支払いを行った。
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