2013 Fiscal Year Research-status Report
地下水硝酸汚染に対する気候変動影響評価のための土壌窒素循環モデルの開発
Project/Area Number |
25850165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
坂井 勝 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (70608934)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 土中窒素循環 / 気候変動 / 地表面熱収支 / 根の吸水 / シミュレーション / HYDRUS |
Research Abstract |
本研究は,気候変動による土壌環境の変化が窒素動態に与える影響を明らかにし,地下水汚染レベルを予測することを目的とする。そのため,土壌中の窒素循環・水分・熱移動の連結モデルを構築,シミュレーションを行ない,実験における実測値を用いてモデルの検証を行なう。さらに,気候モデルによる気候変動を条件として与えることで,硝酸態窒素の下方浸透量を評価,予測する計画である。 土壌中の窒素動態は土中水分移動と温度環境に大きく影響を受ける。そこで平成25年度は,気象条件を考慮した地表面熱収支式を,土中水分・熱・溶質移動予測プログラムであるHYDRUS-1Dに組み込んだ。特に,畑地における窒素循環の予測を目的にしていることから,植生を含む地表面の熱収支モデルの開発を行った。本改良プログラムを用いることで,気候変動モデルに基づく中・長期的な気象予測値を入力し,土壌環境変化を予測することができる。 また,肥料としての窒素成分の移動を考えるためには,植物根がどの深さでどの程度の吸水を行っているかを明らかにする必要がある。そのため,ポットと圃場においてダイズ栽培を行い,水分センサーを各深さに埋設することによって,吸水過程の水分量変化と蒸散速度の測定を行った。実測データと既存の根の吸水モデルのシミュレーション値を比較することで,土中の根量を表す根密度分布と吸水量を表す吸水強度分布の関係について調べた。その結果,根の吸水は必ずしも根密度が大きい深さで起こらず,深い位置に存在する比較的新しい根が活発に吸水していることが分かった。この根の条件を取り入れることで,土壌中での窒素成分の変化をより定量的に明らかにできると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,気候変動にともなう土壌水分量や地温といった土壌環境の変化が,窒素動態に与える影響を明らかにするため,実験によるデータの蓄積と数値シミュレーションによる予測という2つの手法を用いている。平成25年度の達成度から,数値シミュレーションについては順調に進展しており,「圃場調査」と「室内実験」による実測については,遅れが見られている。当初は初年度測定した実測データを,2年目に窒素循環・水分・熱移動の連結モデルを用いて解析する計画であったが,目的を達成するために,それぞれを独立して推進する。 数値シミュレーションについては,まず開発した地表面熱収支モジュールとともに窒素循環モデルをHYDRUS-1Dに組み込む。気候モデルから得られた気象変動のシナリオと,文献から得られる窒素形態変化反応定数の水分・温度依存性を用いることで,土中の窒素動態,それにともなう硝酸態窒素の地下水到達度について予測を行う。「実験」と独立することにより,目的の達成を早めることができると考えられる。 「圃場調査」は,平成25年度に設置した気象観測・土壌環境測定システムを用いて現場の窒素動態について測定を行う。「室内実験」については遅れがある窒素形態変化反応定数の水分・温度依存性については文献値をまずは用いることとし,アンモニア態窒素溶液の下方浸透実験について推進する。下方浸透実験から得られるデータを用いて,上述の窒素循環モデルの検証を行い,予測精度の向上に用いる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,気候変動にともなう土壌水分量や地温といった土壌環境の変化が,窒素動態に与える影響を明らかにするため,実験によるデータの蓄積と数値シミュレーションによる予測という2つの手法を用いている。平成25年度の達成度から,数値シミュレーションについては順調に進展しており,「圃場調査」と「室内実験」による実測については,遅れが見られている。当初は初年度測定した実測データを,2年目に窒素循環・水分・熱移動の連結モデルを用いて解析する計画であったが,目的を達成するために,それぞれを独立して推進する。 数値シミュレーションについては,まず開発した地表面熱収支モジュールとともに窒素循環モデルをHYDRUS-1Dに組み込む。気候モデルから得られた気象変動のシナリオと,文献から得られる窒素形態変化反応定数の水分・温度依存性を用いることで,土中の窒素動態,それにともなう硝酸態窒素の地下水到達度について予測を行う。「実験」と独立することにより,目的の達成を早めることができると考えられる。 「圃場調査」は,平成25年度に設置した気象観測・土壌環境測定システムを用いて現場の窒素動態について測定を行う。「室内実験」については遅れがある窒素形態変化反応定数の水分・温度依存性については文献値をまずは用いることとし,アンモニア態窒素溶液の下方浸透実験について推進する。下方浸透実験から得られるデータを用いて,上述の窒素循環モデルの検証を行い,予測精度の向上に用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度分で26,258円の残高が生じたが,額が少ないこともあり次年度の消耗品費に回した方が有益であると判断した。 上記の残高は,消耗品として必要となる分光光度計の試薬購入費に充てる予定である。平成26年度分として請求した助成金は,当初計上していた通り,室内実験に必要である定温インキュベータとフラクションコレクター(ともに備品)の購入費に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)