2014 Fiscal Year Research-status Report
微生物の代謝機能を利用した地盤環境修復技術の研究開発
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25850166
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 晶子 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10631286)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地盤環境修復 / 砂質土 / 脱窒 / 炭酸カルシウム / 窒素ガス / 不飽和化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,微生物活性を利用した地盤環境修復技術の開発を目指し,脱窒反応による窒素ガスおよび炭酸カルシウムの生成による砂質土地盤の土質特性の変化について検討を行っている.これまでの研究から,脱窒反応による硝酸分解速度は,pHに依存するという知見が得られ,添加する溶質の組成について再検討を実施した.これまでの手法では,酢酸塩と硝酸塩の混合溶液を培養液として用いてきた.この従来法では,培養の段階で炭酸カルシウムの析出が起こり,pHが低下傾向になる.一方,脱窒の反応は,pHが弱アルカリ付近(pH=8.5~9.0)で高くなることが知られている.また,脱窒反応では,添加する炭素源と窒素源の比(C/N比)=3.0~3.5で最も反応が進むという報告があるが,従来行ってきた実験条件のC/N比は1.4となる.そこで本年度は, pHを弱アルカリに維持しながら繰り返し脱窒反応を得られるよう,反応基質の濃度割合を調整することで,再び底泥からの脱窒菌抽出実験を行った. 次に,直径20cm,高さ46cmの中型の砂質土供試体において,脱窒反応による炭酸カルシウムの生成実験を行った.円柱状のカラム容器に砂試料を緩く詰めた飽和供試体を作成し,供試体内部には土壌水分計を埋設した.カラム側面から土壌水分を微量抽出できるような採取口を各高さに設け,高さごとの溶質濃度の変化について測定を行った.添加した硝酸イオン,カルシウムイオンともに,8日後には濃度が検出限界以下にまで低下し,脱窒反応と炭酸カルシウム生成が確認された.反応過程で発生する窒素ガスにより,供試体内部の水圧が上昇し,上部から間隙水の排水が起こった.このことにより,供試体中の土壌水分は低下し,飽和度は100%からおよそ80%にまで低下した.この飽和度の低下は,飽和砂質土地盤を想定した場合,液状化発生の低減が期待できるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から遅延していたカラム実験や実験条件の再検討の実施により,当初計画していた解析や応用実験への展開にまでは至っていない.H26年度より現職に着任したことにより,本研究課題へのエフォートが低下し,研究の進展がやや遅れている. 一方で,実験条件の再検討や繰り返しの室内カラム実験から,脱窒反応により土中で発生するバイオガスの,砂質土飽和地盤の不飽和化への効果について新たな知見が得られた.今回実験で得られた反応プロセスは,地盤の液状化抵抗を高めるための有効な手法となることが期待できる.このことは,今後の研究において,現場での適用を想定した応用実験への展開が期待でき,評価できる点である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から,脱窒反応過程で放出されるバイオガスによる砂質土の不飽和化への効果が確認できた.これにより,これまで研究の目的としてきた,脱窒反応を利用した炭酸カルシウムの析出による砂質土の固化効果よりも,バイオガス生成による飽和砂質土の不飽和化への効果がより大きいのではないかという新たな知見が得られた.このバイオガスによる砂質地盤の不飽和化は,地盤の液状化抵抗の向上として,大きな地盤改良効果が期待できるものであり,これまでに類を見たことが無い新たな知見であることから,今後検討するべき事項である.そこで本研究では,脱窒反応を利用した砂質土の不飽和化について,より詳細に検討を行っていく. まずは,地下水位の高い実地盤を想定したカラム実験を実施し,土中の溶質の移動・反応プロセスについて評価するとともに,脱窒反応を利用した飽和砂質土の不飽和化の効果について検討を行う. また,これまでの研究成果を,2015年9月1~3日開催予定の地盤工学会研究発表会(北海道),2015年11月18・19日開催予定のBioGeoCivil engineering workshop in Delft(オランダ)にて発表予定である.オランダ訪問時には,研究協力者のオランダ・デルフト工科大学Dr.Leon van Paassenら研究チームと不飽和化の効果を評価するための土質実験の手法等について討議する予定である.
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Causes of Carryover |
学会参加や情報収集のための出張が近隣であったことから,旅費の経費が少額となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用消耗品(試薬・ガラス器具等)ならびに国内旅費に充てる.
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Research Products
(2 results)