2014 Fiscal Year Research-status Report
合成開口レーダを用いた飼料用トウモロコシの作付把握
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25850179
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
石塚 直樹 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20414500)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合成開口レーダ / 飼料用トウモロコシ |
Outline of Annual Research Achievements |
打ち上げが延期となっていた国産LバンドSAR衛星のだいち2号機(ALOS-2)であるが、平成26年5月24日(土)予定通り打ち上げに成功した。その後、約半年にわたる初期校正などを経て、平成26年11月25日に観測データの定常配布が開始された。したがって、平成26年度の飼料用トウモロコシの作付け期間中は、試験観測が行われたのみであった。一方、JAXAによりALOS-2と同様のLバンドSARセンサを搭載した航空機SAR(Pi-SAR-L2)による観測が対象地域で行われ、今年度も当該データで研究を遂行した。航空機観測は2回(8,9月)行われ、航空機観測に同期した現地調査を行った。 対象地域において、飼料用トウモロコシを中心に作付品目の確認を行うとともに、サンプル圃場において飼料用トウモロコシの移植密度・稈長やバイオマス計測を行い、SARによって観測された後方散乱係数と比較を行った。その結果、農作物分類については、強度データのみを使った場合全体の分類精度は67%~79%であったのに対し、位相情報を含めた4偏波データを用いた場合67%~81%となった。なお、飼料用トウモロコシ圃場の抽出精度としては、作成者精度は9割を超えており、非常に高い精度で検出できている。衛星観測と航空機観測の大きな相違点は入射角である。そこで、入射角を30度~50度の範囲に限定した結果、全体分類精度でも9割という高い精度を得ることができた。 当初計画において、チャレンジングな課題として「出来れば」と設定していた大まかな収量区分について、8月の観測において、その可能性を示唆するデータが得られたものの、昨年度と違う偏波のデータにおいて最も強い関係がみられ、また、相関関係が正負逆転するという結果が得られた。最終年の来年度も実験を続け、関係性について検討を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALOS-2衛星の打ち上げが延期されたため、当初予定していた衛星を利用した実験・研究を行うことは2年間できなかった。一方、JAXA協力のもと、ALOS-2と同じLバンドSARセンサを搭載した航空機SARによる実験を行うことができた。また、本研究においてチャレンジングな課題としていた収量分類について、2カ年で違う傾向が見られるなど、更なる研究が必要ではあるものの、可能性を示唆する結果を得ることができているのは大きな収穫である。来年度はALOS-2による定常観測が行われる予定であるため、衛星による事象の再現性の確認を行うとともに、現象発生の過程や、飼料用トウモロコシの分類・抽出手法の堅牢性・汎用性の確認など行う予定である。 衛星打ち上げの遅延は個人がどうすることもできない外因であるとはいえ、当初の計画からすれば遅延といえる。一方、JAXAの協力のもと、航空機による試験研究を遂行できていること、予想以上の良い結果が得られていることから、プラスマイナス0と考え、概ね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ALOS-2衛星の打ち上げや初期校正が順調に進んでおり、来年度がALOS-2による本格的な試験の1年目となる。昨年同様に、地元の根釧農試やJA、TMR(Total Mixture Ration)センターに協力して頂きながら同期現地調査等を行い、これまで得られた関係性の再確認や検討などを進める。また、現地におけるニーズ等のヒアリングから、圃場内のムラに注目した解析を行う予定である。北海道の圃場は大きく、また、飼料用トウモロコシは草高が高い(2m以上)ため、圃場端より全体を概観することが出来ない。そこで、現地調査にドローンを導入することを予定している。
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Causes of Carryover |
平成26年度は人事異動により、研究管理部門へ異動となった。したがって、最低限度の研究を行うのみとなり、予算執行も少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の人事異動により、研究部門に戻った。昨年使用できなかった研究費については、今年度の研究補助員の人件費に充当することにより、円滑に研究を遂行する。また、地元農家のニーズのヒアリングから、圃場内の収量ムラも課題であることがわかった。そこで、圃場のムラを概観するためドローンを購入し、衛星観測時に上空から圃場のムラを把握することを試みる。
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