2013 Fiscal Year Research-status Report
ウシ胎盤特有の形態形成に関与するレトロエレメントの解析
Project/Area Number |
25850183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
櫻井 敏博 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (70568253)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / 胎盤機能獲得 / 胚機能獲得 / ウシ |
Research Abstract |
本研究の目的は、次世代シーケンサーを用いてウシ着床周辺期胚(胚の伸長期~初期胎盤形成期)の網羅的な遺伝子発現解析を行い、その解析データからウシ特有のレトロエレメントを抽出する。そして、レトロエレメントの着床周辺期胚における発現動態・局在およびその機能を解析することである。 ウシ着床周辺期胚においてある条件を下に検出した10種の候補レトロエレメントに対して発現解析を行い、その発現量と動態から2種のレトロエレメントに絞った。これら2種のレトロエレメントはgagタンパク質由来であり、ジンクフィンガードメインを有していた。また、それぞれのレトロエレメントにおいてスプライシングバリアントが存在することを確認した。これら2種のレトロエレメントの胚における発現動態を検討したところ、1種は着床前に発現が高く、着床後に発現が消失することから、栄養膜細胞の機能発現に関与していると考えられる。また、このレトロエレメントの非妊娠のメス牛(黒毛和牛)の全身の組織における発現を確認したところ、子宮特異的に高発現していた。もう1種の方は、胚において着床前には発現していないが、着床後に発現が高くなり、妊娠150日の胎児胎盤においても発現していることから、初期胎盤形成や胎盤機能に関与すると考えられる。また、スプライシングバリアントによって胎児胎盤(妊娠150日)での発現に差があることが分かった。このレトロエレメントのメス牛(全身)における発現は、特に皮膚、肝、腎および小腸に高発現しており、中でも上皮系の細胞に局在していた。さらに25年度は、この2種(スプライシングバリアントを含む)の全長cDNAクローニングを行った。 現在は申請時の実施計画通り、siRNAを用いたノックダウンとレトロエレメントの機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請当初の実施計画では、25年度は、① 次世代シーケンサーを用いた着床周辺期胚の網羅的遺伝子発現解析データからのレトロエレメントの絞り込みと見出したレトロエレメントの着床周辺期胚における発現動態および局在の確認、② 検出できたレトロエレメントの全長cDNAクローニング、③ in situ hybridizationおよび免疫染色による局在(着床周辺期の妊娠子宮および全身の組織)、④ レトロエレメントの機能解析、⑤ レトロエレメントの発現調節機構の解析であった。①のレトロエレメントの絞り込みおよびそれらレトロエレメントの発現動態と局在の確認は既に終わった。また、②のスプライシングバリアントを含む各レトロエレメントの全長cDNAクローニングおよび③のin situ hybridizationまでが25年度中に検討した。これらの研究成果は、当初の計画通りである。④レトロエレメントの機能解析および⑤の発現調節機構の解析は26年度に引き続き行う予定であったので、現在までの進捗状況は概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる26年度は、絞り込んだレトロエレメントの機能解析を重点に行い、さらにはレトロエレメントの発現調節機構も併せて行う予定である。25年度に行ったin situ hybridizationの結果、2種のレトロエレメントは発現しているいずれの組織においても細胞質に局在していた。近年、gag由来のレトロエレメントがnon-coding RNA (ncRNA)として働くことが報告された。さらに、ヒトではタンパク質をコードしないDNA領域の割合が全ゲノムの98%にも達し、その大半がncRNAに転写されていることなども明らかにされていることから、ウシにおいても同様にncRNAとしてはたらく可能性があると考えられる。しかも本申請課題で見出した2種のレトロエレメントはいずれも1500塩基以上あり、これらレトロエレメントがmiRNAとしてRNAサイレンシングに関与するとは考えられにくく、長鎖ncRNAとして働く可能性が考えられる。長鎖ncRNAは、一見するとタンパク質をコードするmRNAと見分けがつかず、3'側にはポリA鎖が付加されており、多くのものは複数のエクソン部位をもち、スプライシングを受けている。そこで、見出したレトロエレメントがタンパク質をコードしているのか否かを検証するために、それぞれを検出可能な抗体を作成するとともに、クローニングした全長cDNAを細胞にトランスフェクションし、タンパク質の発現を確認する。もしタンパク質を検出できればタンパク質の機能ドメインから予測を立て、機能解析を行っていく。逆にタンパク質を検出できなければ、長鎖ncRNAとして予測し、機能解析を進めていく。これらの解析は、見出したレトロエレメントが、ウシの栄養膜細胞で働くことを示す最初の報告になることが期待できる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Down-regulation of Interferon Tau Gene Transcription With a Transcription Factor, EOMES.2013
Author(s)
Sakurai T, Bai H, Bai R, Sato D, Arai M, Okuda K, Ideta A, Aoyagi Y, Godkin JD, Imakawa K.
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Journal Title
Mol Reprod Dev.
Volume: 80
Pages: 371-383
DOI
Peer Reviewed
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