2013 Fiscal Year Research-status Report
吸血性節足動物のゲノム内に組み込まれた微生物由来遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
25850195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中尾 亮 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (50633955)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子水平伝播 / 吸血性節足動物 / 共生 / ゲノム進化 / ツェツェバエ / ベクター / BLSOM / Wolbachia |
Research Abstract |
生物種間での遺伝子の水平伝播が生物の進化に大きな役割を果たしてきたことは既に定説となっている。本研究では、病原性原虫(トリパノソーマ)を媒介する吸血性節足動物(ツェツェバエ)をモデルとして、原核生物由来のゲノム断片を網羅的に検出し、ゲノム進化における役割を検証することを目的とした。通常、受け手側の生物のゲノムに埋め込まれた外来遺伝子は長い進化の過程で痕跡化し検出が困難である。そこで、塩基配列の痕跡化の影響を克服するために、塩基の出現頻度に基づく手法としてBLSOM法を適応した。データベース上に公開されているツェツェバエのスーパーコンティグ・ゲノム情報(配列数:25,215、総塩基数:371 Mb)を用いて外来遺伝子の検出を試みたところ、全体の5.8% が原核生物由来と判定された。さらに、ツェツェバエの共生細菌として知られるWolbachia属に由来すると予測された配列を元にBLAST法との比較解析を行い、外来遺伝子の細菌属レベルでの由来推定のための最適BLSOM条件を検討した。導き出された最適化条件では、Wolbachiaと特定される配列が70個得られた。BLAST法でWolbachiaとの相同性が確認された配列(48個)以外に、BLSOM法でのみ検出される配列(22個)が得られた。さらに、アミノ酸データベースとの比較から、機能不明の遺伝子に加え、アミノ基転移酵素等の既知の機能的遺伝子が含まれていることが明らかとなった。また、ツェツェバエに高頻度に共生する細菌としてSodalis属とWigglesworthia属細菌が知られているが、BLSOMならびにBLAST法では両者の遺伝子配列が見出されなかった。外来遺伝子の由来としてはBacillus属、Enterococcus属、Campylobacter属、Listeria属、Staphylococcus属の順で多く検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BLSOM法を用いてツェツェバエゲノム内の水平伝播遺伝子を網羅的に検出することに成功した。BLAST法との比較から、外来遺伝子の由来を細菌属レベルで推定できるBLSOM解析条件が設定できた。さらに、アミノ酸データベースを用いた相同性検索から、一部の外来遺伝子は機能的であることが予測された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検出された外来遺伝子候補リストを用いて、ツェツェバエのトランスクリプトームデータ、ESTデータから、外来遺伝子の機能アノテーションを進める。さらに、パスウェイ解析ならびにネットワーク解析から、ツェツェバエの各種代謝における外来遺伝子の役割を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ツェツェバエのゲノム解析については、FAO/IAEA Agriculture and Biotechnology Laboratories(所在地:ウィーン(オーストリア))に所属するDr. Kostas Bourtzisと共同で進めている。2013年度にデータ取りまとめの為の渡航を計画していたが、先方の予定との調整ができず渡航を延期した。そのため、旅費として計上を予定していた予算が次年度に繰り越しとなった。 繰り越し分の予算を利用して、2014年7-8月にウィーンへの渡航を計画している。
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Research Products
(15 results)