2014 Fiscal Year Research-status Report
吸血性節足動物のゲノム内に組み込まれた微生物由来遺伝子の機能解析
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25850195
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中尾 亮 北海道大学, 学内共同利用施設等, その他 (50633955)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 吸血性節足動物 / ツェツェバエ / 遺伝子水平伝播 / ベクター / BLSOM / Wolbachia / 共生 / ゲノム進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、病原体媒介節足動物のゲノムに内在する異種生物に由来する水平伝播遺伝子領域を解析し、節足動物のゲノム進化への役割を検証することを目的とした。昨年度に引き続き、病原性原虫(トリパノソーマ)を媒介する吸血性節足動物(ツェツェバエ)のゲノム内に存在する微生物由来の水平伝播遺伝子候補領域の絞り込みを行った。候補領域の検出には、塩基の出現頻度に基づく手法である一括学習型自己組織化マップ法(BLSOM)を用いてきたが、検出の特異性を上げるため、新たに相対エントロピーに基づくフィルタリング過程を組み合わせた。データベース上に公開されているツェツェバエのスーパーコンティグ・ゲノム情報を断片化サイズ5 kb, ステップ幅1 kbで断片化した配列(配列数:229,960)のうち、BLSOM法で11,020配列が原核生物に由来すると推定され、相対エントロピーによるフィルタリングにより8,817件を最終候補領域として検出した。由来細菌属はBacillus属(1,943件)、Enterococcus属(867件)、Campylobacter属(507件)、Staphylococcus属(486件)、Listeria属(452件)が上位を占めた。また、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)データベースを用いたパスウェイ解析により、コードする遺伝子機能を推定したところ、脂質代謝、炭水化物代謝、核酸代謝等に多くマッピングされた。さらに、野外に生息するツェツェバエのゲノム内に、これらの遺伝子領域が存在するのかを検証する目的で、ザンビア共和国ルフンザ地区にてツェツェバエの野外採集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BLSOM法に相対エントロピーによるフィルタリング過程を組み合わせることでツェツェバエゲノム内の水平伝播遺伝子を網羅的かつ高精度に検出することに成功したため。パスウェイ解析の結果から、複数の代謝経路をコードする遺伝子群を検出でき、野外に生息するツェツェバエの採集済みであり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ツェツェバエのゲノム内に埋め込まれた水平伝播遺伝子候補の検出のため、これまで英国・サンガー研究所が公開しているゲノムスキャホールド情報を用いて解析を行ってきた。しかしながら、本研究の成果発表前にツェツェバエの全ゲノム情報が報告されたため(Science. 2014)、当研究で得られた検出結果と比較検証する必要が生じた。従って、新たにツェツェバエ全ゲノム情報を解析対象に加え水平伝播遺伝子の検出を行い、BLAST法に基づく既報とBLSOM法による解析結果との比較を行う。 野外採集したツェツェバエのゲノムならびに、その保有細菌群を新たに研究対象に加える。野外捕獲ツェツェバエのゲノム内にBLSOM法で検出された外来遺伝子群は存在するか、水平伝播遺伝子の由来細菌属として検出された細菌群はツェツェバエ体内に現在も恒常的に生息するのかを検証する。
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Causes of Carryover |
最近になって、ツェツェバエの全ゲノム情報が発表されたため(Science. 2014)、当初の計画を変更し、新たに全ゲノム情報を対象に水平伝播遺伝子の検出を行い、BALST法に基づく既報とBLSOM法による解析結果との比較を行う必要が生じたため。さらに、複数のツェツェバエ集団での水平伝播遺伝子領域の保存性を検証する意義が生じたため、野外捕獲のツェツェバエを解析対象に加えることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全ゲノム情報を対象にしたBLSOM解析のため計算機使用料を計上する。また、野外捕獲のツェツェバエの水平伝播遺伝子の検出を目的とした遺伝子増幅実験のための消耗品費、ならびに保有細菌組成解析のための次世代シーケンサー消耗品費に充てる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Detection and characterization of zoonotic pathogens of free-ranging non-human primates from Zambia2014
Author(s)
Nakayima J, Hayashida K, Nakao R, Ishii A, Ogawa H, Nakamura I, Moonga L, Hang'ombe BM, Mweene AS, Thomas Y, Orba Y, Sawa H, Sugimoto C
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Journal Title
Parasit Vectors
Volume: 7
Pages: 490
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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