2014 Fiscal Year Research-status Report
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25850198
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
白藤 梨可 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教 (00549909)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マダニ / 栄養シグナル伝達 / RNA干渉法 / 飢餓 / 吸血 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.フタトゲチマダニHaemaphysalis longicornis発育胚cDNAライブラリーより得た、ヒストン脱アセチル化酵素Sir2(silent information regulator 2)に相同な2つの遺伝子について特性解明を実施した。BLAST解析より、本研究で得られた2つのSir2相同遺伝子はSIRT5およびSIRT7に相同な遺伝子であることが判明した。H. longicornis SIRT5 (HlSIRT5)のcDNAは全長3,015 bp、ORFは891 bpであり、推定産物は296アミノ酸から構成され、その推定分子量は31.9 kDaであった。 一方、H. longicornis SIRT7 (HlSIRT7)のcDNAは全長2,695 bpであり、ORFは1,320 bpであった。推定産物は439アミノ酸から構成され、分子量は50.2 kDaと推測された。HlSIRT5およびHlSIRT7アミノ酸配列は、マダニの一種Ixodes scapularisのchromatin regulatory protein sir2と最も高い相同性を示し、それぞれ86%、75%であった。 2.未吸血および吸血マダニより中腸を回収し、未吸血(飢餓状態)および吸血マダニのリン酸化タンパク質プロファイリングに供するタンパク質抽出液を作製した。 3.血液と血清を様々な割合で混合し、各々を人工吸血法により雌ダニに摂取させ、表現型を解析した。その結果、飽血体重、卵重量、卵の孵化率について対照群と実験群との間に有意差は無かったが、血清の割合が多くなるほど卵および幼ダニの色(琥珀色)が薄くなる傾向が認められた。摂取赤血球量の減少、すなわちマダニ体内におけるヘモグロビン量の減少が卵黄タンパク質が保有するヘム量の減少をもたらし、その結果として卵および幼ダニの色が退色したと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度単離したSIRT5およびSIRT7相同遺伝子について特性解明を実施した。Sir2遺伝子はマダニの一種Ixodes scapularisのゲノムデータベース上に存在するが、その特性解明は未だ行われていない。サーチュインファミリー遺伝子はカロリー制限時の寿命延長に関与することが様々な生物種において知られている。したがって、マダニにおけるSir2遺伝子の役割を明らかにすることは、生活史の約95%以上を飢餓状態で過ごすマダニの栄養代謝の分子基盤を解明するための重要な手がかりになると期待される。また、リン酸化タンパク質プロファイリングに供するサンプル調整に時間を要したが、解析に必要なサンプルを十分量得ることができ、現在解析を進めていることから、進捗状況に問題はないと考える。さらに、人工吸血法により、対照群とは異なる体色のマダニを人為的に作製することが可能となった。この表現型が幼ダニにとって致死的であるか、その後の発育期に移行できるか否か等の検証を進める必要がある。しかしながら、本法を応用することにより、マダニの吸血、卵形成、胚発生、飢餓時における栄養代謝の分子基盤を解明できると期待される。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究成果をさらに発展させ、加えて、平成27年度の計画に沿った研究を遂行する。3年間の研究成果を総括する。 1.SIRT5およびSIRT7相同遺伝子についてリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析、RNAiを実施し、マダニ栄養代謝におけるサーチュインファミリー遺伝子の機能解明を図る。 2.作製済みのタンパク質抽出液を用いて、飢餓および吸血マダニのリン酸化タンパク質プロファイリングを実施し、飢餓・吸血マダニの栄養シグナル伝達に必須のタンパク質同定を試みる。 3.人工吸血法により様々な組成の血液溶液をマダニに摂取させ、表現型解析ならびに分子レベルでの解析を実施し、栄養シグナル伝達経路を活性化させるトリガー因子の探索を試みる。 4.オートファジー関連遺伝子ATG13の単離を試み、遺伝子発現解析、RNAiを実施するとともに、マダニ組織培養を用いたオートファジー阻害実験を行い、マダニの栄養代謝におけるオートファジーとAkt/TOR経路との役割、ならびにSir2遺伝子との関連性を解明する。
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Research Products
(2 results)