2013 Fiscal Year Research-status Report
犬悪性黒色腫に対する新たな腫瘍特異的キラーT細胞療法に関する研究
Project/Area Number |
25850204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
富張 瑞樹 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (00552754)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腫瘍 / 犬 / 悪性黒色腫 / 免疫学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
まず、新たな抗原提示細胞としての利用法を確立するために、犬培養細胞株DH82をATCCより購入し、継代培養を行った後、適当なレベルでの放射線照射を行うことで不活化させることが可能なことを確認した。具体的には、5Gyでは残存する細胞が存在するのに対し、10Gy、20Gy、50Gyの3条件においては、照射から7-14日後の生存細胞数がほとんど認められなくなった。また、同細胞に対し、mitomyciun C(50ug/ml、30分、37℃)による不活化も可能であることも確認した。 次に、これまでのin vitroの結果を、よりin vivoの系で検討するため、免疫不全マウスを用いた予備実験を行った。まず、我々の保有する犬悪性黒色腫細胞株6種のうち、in vitroでの細胞障害活性、ならびに成長曲線において良好な結果が認められていたMiとPuに対して、Balb/c nu/nuマウスならびにNOD scidマウスの2種の免疫不全マウスを用い、マウス皮下に接種した後の成長を観察した。この結果、nu/nuマウス、scidマウスのどちらにおいても21-28日後に至るまで良好な腫瘤の腫大を認めた。また、どちらの細胞株においても、ほとんどの個体において接種21日目頃より中心部の自壊を認めたが(9個体/12個体中)、nu/nuマウスでは自壊、壊死部が広がるにつれて腫瘍全体の成長曲線が鈍るのに対し、scidマウスの場合では、28日を超えても腫大を続ける傾向が認められた。これはマウス種におけるNK細胞の有無が関与しているものと考えられた。このため、接種腫瘍細胞近傍に活性化リンパ球を投与した場合の反応性についても、マウス種によって異なる可能性が考えられた。 上記と並行して、本学動物医療センターに来院された悪性黒色腫症例の臨床データならびに免疫学的プロフィールのデータ収集を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DH82を用いた実験は、次年度における本実験の条件付けとして十分な達成度を満たしていると考えている。本年度の実験はどちらも、「生存を確認されないレベルの不活化が行われた」ことを示している。将来的な臨床応用を考えた場合、個体差に基づいた拒絶反応があるとはいえ、同種(どちらもイヌ)の腫瘍細胞の一部が播種される可能性がある。このため、細胞に対する確実な不活化は不可欠であり、これらの実験結果は本研究において不可欠な内容である。 一方、免疫不全マウスに対する予備実験の方では、当初の予定通りの内容と、予定通りでなかった点、また予見を超えた内容とが存在した。まず、培養細胞株の中ではとくにKMecを用いる予定であったのが、細胞株の保存がうまくできておらず、良好な継代培養を行うことができなかった。このため昨年度は、主な実験をMiで行った。また私自身の知識が浅く、一言に免疫不全マウスと言っても、現行では通称nu/nuマウスに加えて、NOD系統のscidマウス、リンパ節やパイエル板が消失するというalyマウス、さらには遺伝子改変により作製されたrag1ノックアウトマウスなども商業的に購入可能であった。本研究内容においては、①異種接種(イヌの細胞を、マウスに接種)であることから、免疫不全でなければならないこと、②活性化リンパ球による抗腫瘍活性は、直接的な細胞障害活性と同時に、周囲の免疫担当細胞の局所的な活性化も行っていること、の2点を考慮した結果、NK活性の残存するnu/nuマウスと、NK活性をも消失しているscidマウスの2種を選択し、予備実験を行った。この結果、腫瘍の成長に応じて成長曲線に違いが認められることが確認されており、次年度以降の本実験のためにも非常に有用な知見が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、DH82を用いた新しい抗原提示ならびにリンパ球活性化についての検討を行う。放射線、もしくは化学的に不活化させたDH82に対し、腫瘍関連抗原ペプチド(Tyrosinase, gp100, TRP2, MAGE1など)を用いた抗原提示細胞としての能力を、細胞障害活性の系を用いて測定する。この際、ペプチド添加後のDH82細胞そのものを用いた場合と、超音波破砕し、破砕液を添加することでリンパ球の抗原特異性+賦活化が可能であるかも検討する。検討項目は添加する細胞の量(リンパ球との比率)、ペプチド添加量、ペプチドの種類、細胞破砕液の濃度などである。対象とする悪性黒色腫細胞株はMiもしくはKMecを用いる予定である。 次に、免疫不全マウスに対する本実験としては、まずKMecを分与いただいた東京大学獣医外科学研究室より再度分与していただき確保する。このKMecやMiに対し同様の予備実験を進めると同時に、実際のマウスへの皮下接種を行うことで、キラーT細胞を中心に活性化させたリンパ球の抗腫瘍効果や、抗Gpnmb抗体による免疫寛容機構の阻害効果について、in vivoにおける腫瘍成長曲線によって評価、検討する。また、nu/nuマウス、scidマウスを用いたマウス種による違いについてもあわせて検討する。 これらの検討において良好な結果が得られた場合には、我々の保有する健常犬に対し、ペプチドを添加したDH82や破砕液の利用、あるいは抗Gpnmb抗体などを用いた活性化リンパ球投与に関する安全性について、予備的な検討を行う予定である。
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