2014 Fiscal Year Research-status Report
多角的アプローチによる犬種関連性肝胆道系疾患の遺伝子解析
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25850205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金本 英之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70646728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 犬種関連性肝胆道系疾患 / 胆嚢粘液嚢腫 / 胆汁酸 / 一塩基伸長反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
犬種関連性肝胆道系疾患として本研究計画のうち、とくに胆嚢粘液嚢腫(以下GM)に焦点を絞り、研究を行った。GMに罹患した犬、および対照として腹部超音波検査で胆嚢の所見を確認した症例の全血からゲノムDNAを抽出した。罹患犬の犬種は多岐に渡り、各犬種毎のサンプル数が不足しているため、当初サンプルを収集する研究機関に加え、新たに二次診療施設から症例を広く集め、ゲノムDNAを収集した。これらのサンプルの罹患動物の基本情報および胆嚢超音波画像所見、血液検査所見、および関連する併発疾患についてデータをまとめた。また疾患関連候補遺伝子を選択し、多サンプルを用いた多型解析を行うため、一塩基伸長反応に基づくmultiplexな解析系を確立した。 病態から関連する遺伝子を推定するため、GM罹患症例の血清および胆汁を収集し、罹患犬と対照犬における胆汁酸分画を解析し、その結果の一部について、第11回日本獣医内科学アカデミー学術大会にて研究発表した。仮説としてGMの罹患と細胞毒性の強い胆汁酸分画の増加との関連を期待していたが、結果としてGMと対照群において、疎水性胆汁酸と親水性胆汁酸の比率に有意な違いは認められなかった。しかし、一部の胆汁酸分画の割合はGMと対照群において有意な差が認められ、胆汁酸組成の変化とGMの発症に関連があることが示唆された。また、過去にGMと高脂血症との関連が示されており、本研究においても高脂血症における胆汁酸組成の変化についても検討を行ったところ、高脂血症群においてもGMと同様の胆汁酸組成の変化が認められる傾向にあった。これらのことから、高脂血症が胆汁酸組成の変化を介してGMの発症に関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究対象として設定した各種肝胆道系疾患のうち、慢性肝炎・肝血管異常については解析を行っていない。一方、胆嚢粘液嚢腫(以下GM)については、国内の幅広い動物診療施設・研究機関から多数のサンプルを収集し、その情報について整理を行うことができた。またGMの病態について、血清を用いた生体内胆汁酸分画について検討を行い、胆汁酸組成の変化がGMに果たす役割について知見を得た。この結果は国内の学術集会にて報告した。この結果は当初の研究目的を達成する上で、疾患関連候補遺伝子の設定・修正に大きな役割を果たすと考えられる。また、候補遺伝子の解析については、多数のサンプルの収集を行い、今後の研究期間とあわせて解析に必要なサンプル数を達成できると考えられた。さらに、それら多数のサンプルを効率よく解析するための解析系を確立した。次年度、これらのサンプル解析が実際に開始できる状況であり、その結果をもとにさらなる知見を得ることができ、研究の目的であるGMの病態にかかわる遺伝子の探索に向けて前進していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、犬の胆嚢粘液嚢腫について、さらなる病態解析を進めるとともに、疾患関連候補遺伝子については、これまでに確立した解析系を用いた解析を進めていく。具体的には、病態解析として血中胆汁酸分画についての検討だけでなく、胆嚢内胆汁および肝臓胆汁の収集・分析を行っていく予定である。遺伝子解析で疾患関連遺伝子が同定された場合には、既に収集した肝臓サンプルを用いた遺伝子発現解析を行っていく。また、遺伝子解析については、既に対象としている遺伝子だけではなく、これら病態解析の知見を踏まえ、新たに候補遺伝子を設定し、幅広く解析を行う予定である。また、収集サンプルについては対象とする動物診療施設を増やし、さらに増加が期待できるため、その結果によっては関連候補遺伝子アプローチだけでなく、ゲノムワイドな解析についても検討を行う予定である。
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Research Products
(5 results)