2013 Fiscal Year Research-status Report
初期胚に見出された新規ホスファチジルイノシトール3キナーゼ結合分子の機能解析
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25850220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀井 宏泰 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (00610362)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PI3K結合分子 / 胚性幹細胞 |
Research Abstract |
本年度の研究では、マウス ES 細胞においてこれまでに同定した新規 PI3K-p110b (以下、PI3K) 結合分子の中でも特定の分子(110bAP1)に的を絞り、この分子と PI3K の結合状態がどのような生理的条件で変化するか、また、この分子と PI3K との結合がどのような意味を持つのか検討を行った。まず 110bAP1 が重要な働きをする事が予想される低酸素状態に着目した。低酸素状態を模倣できる薬剤(DFO および CoCl2)でマウス ES 細胞を処理し、一定時間培養した。これらの細胞内での PI3K と 110bAP1 の結合状態を解析したところ、薬剤無処理の細胞と比べ結合が阻害される傾向が見られた。また、細胞外からの増殖因子の刺激で PI3K は活性化する事が知られている事から、胚の成長に重要な働きを持つインスリン様成長因子(IGF)の刺激により同定した複合体の形成がどのように変化するかも併せて調べた。その結果、マウス ES 細胞において発現が確認された特定の PI3K アイソフォームにおいてのみ、IGF の刺激依存的に 110bAP1 との結合が促進される事が見出された。また、siRNA を用いた実験から、110bAP1 の発現阻害によりマウス ES 細胞内での PI3K 活性が低下する傾向にある事も分かった。PI3K の発現阻害では 110bAP1 が持つ酵素活性に大きな影響を与えなかった。以上の本年度の結果から、「未分化な胚性幹細胞では 110bAP1 が PI3K 活性の調節を行なうことで多様な細胞機能を制御している」と云う作業仮説を提唱するに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画上は本年度に PI3K 結合分子群と PI3K の結合状態や遺伝子の発現動態の解析を行ない、次年度時に PI3K 活性に与える影響を解析する予定だった。しかし結合実験に必要な分子の調整等に想定外の困難が生じた為、本年度は計画を前倒しして、結合分子が PI3K 活性に与える影響を調べた。本年度に行った実験に関しては、予想外の結果も得る事ができ、研究を進める上で重要な知見を蓄積することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は進行が遅れていた PI3K 結合分子群と PI3K の結合状態や遺伝子の発現動態の解析を行なう。さらに、これまでに得られた結果を基に、マウス ES 細胞を用いた in vitro での増殖・分化を調べる実験系とゼブラフィッシュ胚を用いた個体レベルの実験系を併用することにより、胚発生過程での PI3K 結合分子群の働きをより詳細に解析する予定である。
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