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2013 Fiscal Year Research-status Report

カイコ小球細胞欠如突然変異体の原因遺伝子の同定~存在意義が不明な血球の謎に迫る~

Research Project

Project/Area Number 25850228
Research Category

Grant-in-Aid for Young Scientists (B)

Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

木内 隆史  東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60622892)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2015-03-31
Keywordsカイコ突然変異体 / 血球 / 小球細胞 / 分化系譜 / ゲノム編集 / 遺伝学 / 分子生物学
Research Abstract

昆虫の血球は生体防御や傷の治癒に関与している。血球の種類は大きく分けて5つ存在し、それぞれの血球種の機能や分化系譜が調べられているが、そのうち小球細胞に関してはその機能および分化系譜がほとんど未知である。私たちは昆虫種で唯一小球細胞を欠く突然変異体(sprとSph)が維持されているカイコを用いて、その原因遺伝子を単離することにより、小球細胞の機能と分化系譜に迫ろうと考えている。
当初、私たちはspr突然変異体の原因遺伝子を10番染色体上の約238 kbの領域に絞り込んでいた。2013年度はこの候補領域内にある唯一の遺伝子に対して調査を進めたが、正常型と突然変異体で発現量や遺伝子構造に差がみられず、候補領域の絞り込みに間違いがある可能性が指摘された。また、絞り込みの間違いはおそらく形質の見誤りに起因すると考えられた。そこで、あらためてspr突然変異体とSph突然変異体のポジショナルクローニングを行うための交配およびBC1個体の作出を行った。作出したBC1個体から採血し、小球細胞の有無を確実に判定したのちに保存した。保存したBC1個体からDNAを抽出し、PCR多型マーカーにより遺伝子型を調べることでspr突然変異体の原因遺伝子を絞り直したところ、以前とは異なる約260 kbの領域に絞り込むことができた。この領域には7個の予測遺伝子が存在した。今後は、7個の予測遺伝子に関して詳細な調査を進め、原因遺伝子を特定する。
一方、小球細胞の機能を調べるためには小球細胞の有無による形質の差を詳細に比較することが必要である。そのためには遺伝的背景が同じ系統を用いて比較を行うことが重要である。そこで、カイコのゲノム編集技術を導入した(Daimon et al., 2014, Dev Growth Differ)。遺伝子のノックアウトを行うことで、同じ系統を用いての形質の比較が可能となる。同定した原因遺伝子のノックアウト系統を樹立し、小球細胞の機能と分化系譜を明らかにしたいと考えている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

spr突然変異体の原因遺伝子の候補領域に間違いがあることが判明したが、直ちにポジショナルクローニングをサンプリングからやり直すことで、10番染色体上の約260 kbの範囲に絞り込むことができた。候補領域には7つの予測遺伝子が存在した。
Sph遺伝子のポジショナルクローニングもBC1個体のサンプリングまで終了していたが、spr突然変異体のBC1個体の形質調査に誤りがあることがわかったため、念のためSph突然変異体に関してもポジショナルクローニングに必要なBC1個体の形質調査とサンプリングをやり直した。2013年度中にはSph遺伝子の候補領域の絞り込みが終了している予定であったが、spr遺伝子のポジショナルクローニングのやり直しを優先したために遅延した。しかし、spr原因遺伝子の絞り込みには成功しているため、Sph遺伝子に関しても同様のストラテジーを用いることで2014年度の比較的早期に絞り込みが終了するはずである。
当初、原因遺伝子の機能証明法としてin vitro培養系の利用とembryonic RNAi法を考えていたが、カイコのゲノム編集技術に進展がみられたため、より直接的な証明が可能なCRISPR/Casシステムによる遺伝子ノックアウト法の導入を進めた(Daimon et al., 2014, Dev Growth Differ)。遺伝子ノックアウト法の確立は小球細胞の機能を解析するために2014年度内の達成を目指していた課題であるが早期に達成された。実際に実験系評価の指標となりうる遺伝子のノックアウトにも成功し、小球細胞の機能解析にも十分に実用可能であると考えられた。

Strategy for Future Research Activity

2014年度はポジショナルクローニングにより絞り込んだ7個のspr候補遺伝子から原因遺伝子の同定を急ぐ。まず、候補領域をさらに絞り込むために、領域内に新たなDNAマーカーの構築を試みる。さらに、候補遺伝子についてRT-PCRやRACEを行い、正常型と突然変異体における発現量や遺伝子構造上の違いを調査する。原因遺伝子の絞り込みの後、機能証明としてCRISPR/Casシステムによる遺伝子ノックアウトを行う(Daimon et al., 2014, Dev Growth Differ)。また樹立したノックアウト系統の形質を由来系統と比較することで、小球細胞の有無が及ぼす生体への影響を詳細に調査する。とくに免疫反応や計量形質に注目した実験系を考えている。
Sph突然変異体に関しても同様のストラテジーにより原因遺伝子を同定する。すなわち、ポジショナルクローニングによる候補領域の絞り込みを行い、絞り込んだ候補遺伝子に関してCRISPR/Casシステムによるノックアウトを行う。
ノックアウトカイコを用いた形質調査と小球細胞への分化に関与するタンパク質(突然変異体の原因遺伝子がコードするタンパク質)の機能から、小球細胞の機能と分化系譜を考察し、本研究課題の目的を達成する。
spr突然変異体を用いて得られた成果とSph突然変異体を用いて得られた成果はそれぞれ独立にまとめ、学会発表と論文発表の形で公表する予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

前年度達成する予定であったSph突然変異体原因遺伝子のポジショナルクローニングによる絞り込みが遅延したため。
Sph遺伝子のポジショナルクローニングに必要なプライマーの合成とPCR酵素などの購入。

  • Research Products

    (2 results)

All 2014 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Recent progress in genome engineering techniques in the silkworm, Bombyx mori.2014

    • Author(s)
      Takaaki Daimon, Takashi Kiuchi, Yoko Takasu.
    • Journal Title

      Dev Growth Differ.

      Volume: 56 Pages: 14-25

    • DOI

      10.1111/dgd.12096

    • Peer Reviewed
  • [Remarks] 東京大学-昆虫遺伝研究室 公式ウェブサイト

    • URL

      http://papilio.ab.a.u-tokyo.ac.jp/igb/index.html

URL: 

Published: 2015-05-28  

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