2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチドメイン構造二重ラセン分子の合成と複合的機能
Project/Area Number |
25860002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 亘 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (00636409)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチドメイン / エチニルヘリセン / アミドヘリセン / 有機ゲル / ゲル収縮 / ナノ粒子 / 平衡移動 |
Research Abstract |
アミドヘリセンオリゴマーとエチニルヘリセンオリゴマーを連結したジドメイン化合物と、擬鏡像異性体エチニルヘリセンオリゴマーを様々な有機溶媒中で混合し、ゲル形成を検討した。ピリジンなどの極性溶媒と、トルエンなどの低極性溶媒では異なる性質のゲルを与えた。CD、UV測定の結果から、前者(タイプA)ではアミドドメインがランダムコイルで存在しており、後者(タイプB)ではラセン二量体会合を形成していた。アミドドメインの構造状態によって、ゲルの性質が変化することが分かった。また、ピリジン溶媒のゲルでは、過塩素酸リチウムを添加することで体積比25%まで収縮を起こした。収縮ゲルは上清を除き、溶媒を加えて加熱冷却すると同体積のゲルに戻った。タイプAゲルではアミドドメインのランダムコイルにリチウム塩が作用して、ゲルが収縮したと考えている。また繰り返しゲル化を起こしたことから、収縮したゲルは強固であり、ゲル本体の化合物の流出は起きていない。従って、本研究の目的である可逆的な形態変化が本系において可能と考えられる。 ヘリセンの分子認識能を拡大する目的で、表面に光学活性ヘリセンを担持したシリカナノ粒子を用いて、エチニルヘリセンオリゴマーの構造状態認識を行った。二重ラセン状態のオリゴマーはランダムコイルに比べて1/10程度の時間で沈殿し、二重ラセンオリゴマーのみ吸着した。また、二重ラセン-ランダムコイルの平衡溶液にナノ粒子を加えると、50%が二重ラセン状態で沈殿として得られた。ナノ粒子表面のヘリセン分子によって、分子の形状を認識し、吸着できることがわかった。さらに一方の形状の分子が沈殿として除かれることで、溶液中の会合解離の平衡をシフトできることがわかった。 以上に加えて、ジドメイン化合物は擬鏡像異性オリゴマー間において 4分子間会合体を精密に形成し、さらに熱などの要件で構造変化できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していたDMSO添加のゲルに対して、有機溶媒の種類によって性質の異なるゲルを見出し、広範な条件で本研究が実行できることを示した。また実際にアミドドメインの会合-解離の構造状態に応じてゲルの性質も変化していることが分かった。さらにリチウム塩のような無機塩とアミドオリゴマーの間に相互作用を起こすことを実験的に示し、これによってゲル収縮を起こすという予想外の結果を出した。 これまでにヘリセン担持シリカナノ粒子表面では不斉アルコールの速度論的光学分割ができることを報告していたが、今回初めて、オリゴマー分子の吸着および沈殿形成を起こした。オリゴマー間で構造認識することに加え、ヘリセンシリカ粒子表面を用いて、分子の形状を認識できることを示した。さらに沈殿形成によって溶液中の会合解離の平衡をシフトするという新規な手法が得られた。本研究の目的の動的な動的形態変化の基盤となるデータに加え、新規な性質のゲルおよび平衡移動の方法論を見出したことから、当初の計画以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
水系溶媒中でオリゴマーの構造変化および形態変化ができるようになれば、さらに多様な物性を展開できる。塩添加によるゲル収縮において、水との二層系で塩を除去する方法で可逆的な形態変化を検討する。当初の計画に挙げた層側の種類、pH、塩濃度の調節によって、拡散・除去の時間を制御する方法を調べる。 アミドドメインの性質、機能のさらなる検討として、界面での集合形成を検討する。シリカ表面での特徴的な分子認識をオリゴマーの集合体で見られるか調べる。ジドメイン、トリドメイン化合物に応用し、機能の合成を起こした界面膜、ミセル、ゲルなどの形態の動的制御にすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では、予想よりも試薬の購入費が安価で済んだため全体の5%ほど経費を残した。次年度に更に高額の試薬を用いることを予定し、効率的な研究運営のため残額を含めて次年度に使用することを希望した。 本研究ではオリゴマーの性質解明およびゲル形成の検討において多数の溶媒、反応試剤の検討を要する。また各種測定に用いる高純度溶媒を購入する。また次年度は研究報告および情報収集を目的に学会参加を計画しており、その旅費に充てる。
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