2013 Fiscal Year Research-status Report
合成ヘテロ二重ラセン化合物の異方的三次元分子集合ボトムアップと運動機能
Project/Area Number |
25860003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 望 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (40636411)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 二重ラセン / ヘリセン / オリゴマー / 液晶 / 両親媒性 / ベシクル / グアニジニウム |
Research Abstract |
本研究は,化学合成したエチニルヘリセンオリゴマーを用いて異方的・規則的集合体を構築することで,ナノ・マイクロメートルオーダーの分子構造変化をセンチメートル・メートルオーダーのマクロ運動機能に結び付けること,このために生体のように小分子・巨大分子をボトムアップする方法論を開発することを目的としている.今年度は,この基盤となる新規化合物群を合成して性質を調べた. (1)棒状液晶分子を末端に有するオリゴマー四量体および五量体を合成し,有機溶媒中においてホモ二重ラセン-ランダムコイル間で可逆的に構造変化することを示した.五量体について,二重ラセン状態にある溶液から得た固体を加熱すると,サーモトロピック液晶状態を発現することがわかった.現在,円二色性,小角X線散乱,示差走査熱量測定法などにより液晶の詳細な性質を調べている.液晶は分子が異方的かつ流動的に並んだ状態であり,二重ラセン分子を異方的に整列させて運動機能を開発する本研究課題の達成に向けて極めて有効な結果である. (2)親水性トリエチレングリコール部を末端に有する両親媒性エチニルヘリセンオリゴマー四量体を合成した.この化合物が極性溶媒を含む種々の有機溶媒中でホモ二重ラセン-ランダムコイル構造変化を行うことを示した.また,水系溶媒中でベシクル,即ち内部に空洞を有する球状集合体を形成することを見出した.ベシクルの大きさは加熱冷却によって可逆的に増減した.ドラッグデリバリーシステムとして応用できる可能性を示す結果であり,分子構造変化との関連を調べている.加えて,東北大多元研・三ツ石方也教授の協力のもと,Langmuir-Blodgett法によりオリゴマー部と親水部が分離して異方的に並んだ多層構造の形成を検討している. (3)塩架橋による網目状構造およびゲル形成を期待し,末端にグアニジニウム基を有するオリゴマーを合成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)本年度の計画は,末端に液晶部位を有するオリゴマーの液晶性を調べ,ポリマー等を用いて自立物質を得たのち厚さ変化を検討する計画であった.実際には,化合物を合成し,溶液中でホモ二重ラセンを形成することおよび液晶性を有することを確認した.また,液晶状態においてホモ二重ラセンからランダムコイルへの分子構造変化を起こし得ることを示した.自立物質構築は行っていないが,液晶性を調べる過程で,ホモ二重ラセン状態から得られた固体とランダムコイル状態から得られた固体が異なる相転移を起こすなど,研究開始時には予定していなかった現象を見出し,これについても詳細を調べている. (2)本年度の計画は,両親媒性エチニルヘリセンオリゴマーを合成し,多層構造を得る計画であった.予定通り化合物を合成し,溶液中におけるホモ二重ラセン-ランダムコイル構造変化について詳細を調べた.多層構造形成については検討中であるが,この第一段階である単分子膜形成の条件検討を行い,適する条件を見出した.開始当初の計画に加え,水系溶媒中でベシクルを形成すること,熱刺激に応答して可逆的に大きさ変化することを見出し,これについても調べている. (3)計画した内容に加え,新規に化合物を設計して合成した.この点について,計画以上の進展があったといえる. 以上の状況を考慮し,全体としては当初の計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)末端に液晶部位を有するオリゴマーの液晶相および分子状態について詳細を明らかにする.続いて,液晶状態においても溶液中と同様に再現良く可逆的なホモ二重ラセン-ランダムコイル構造変化を起こす条件を検討する.具体的には,温度および溶媒蒸気への暴露について検討する予定である.続いて,液晶の異方性を利用して分子を配向させた状態で物理的強度を高め,異方性自立物質を構築する方法を検討する.柔軟なポリマーシート上にオリゴマーを配向させ積層化する方法,液晶を電場・磁場によって異方的に配向させた状態で超分子ゲル化剤あるいはポリマー前駆体を加えて液晶含有ゲルを形成させる方法を計画している. (2)親水性トリエチレングリコール部を末端に有する両親媒性エチニルヘリセンオリゴマーについて,ベシクルの大きさ変化と分子構造変化の関係性を調べる.この変化に伴う膜透過性の変化を調べ,ドラッグデリバリーシステムとしての応用を検討する.また, Langmuir-Blodgett法によって,オリゴマーが異方的に並んだ多層構造を有する累積膜を構築する.累積膜中で分子構造変化を起こす条件を検討し,これに伴う膜厚変化を,段階的に膜の累積数を増加させながら分析する. (3)末端にグアニジニウム基を有するオリゴマーについて,溶液中でのホモ二重ラセン-ランダムコイル構造変化を調べる.続いて,多価カルボン酸などを加えることで,塩架橋によってオリゴマーが網目状に連結された超分子ゲルの形成を検討する.ホモ二重ラセンに加え,擬鏡像オリゴマーを加えてヘテロ二重ラセン形成を検討する.ヘテロ二重ラセンが集合してリオトロピック液晶を形成し,異方性ゲルを形成すると期待している.これらのゲル中での分子構造変化及びそれに伴う形状変化や体積変化を調べ,運動機能性物質としての機能を開発していく.
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Research Products
(11 results)