2013 Fiscal Year Research-status Report
LC/MS/MSを用いたリゾリン脂質超高感度精密定量分析に関する研究
Project/Area Number |
25860021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三枝 大輔 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (90545237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リゾリン脂質 / LC/MS/MS / レーザーマイクロダイセクション / 原子間力顕微鏡 / 固相抽出カラム / ジルコニア / メタボローム解析 / S1Pトランスポーター |
Research Abstract |
本研究の目的は、LC/MS/MSを用いる超高感度リゾリン脂質精密定量分析系を構築し、レーザーマイクロディセクション(LMD)によって切り出された微量組織によるリゾリン脂質定量解析を実施することである。 現在までに、Nanoviperによる分析システムの流路系の改善、ジャケットヒーターによるトラップカラムの再現性向上等により、リゾリン脂質超高感度カラムスイッチングシステムの構築に成功した。また、測定に用いる分析カラムの内径を0.3μmとしたところ、クロマトグラム上に大きなピークテーリングが見られたが、カラム合成時に新たな処理を加えることにより(資生堂との共同研究)改善することに成功した。本システムでのリゾリン脂質の検出限界は数pmol/Lであり、現在分析法バリデーションを実施している。 次に、LMD組織切片からの定量解析を実施した。超高感度化により、リゾリン脂質の分布が比較的低いとされる脾臓において、600細胞程度からの定量に成功した。現在までにLMDによる微量組織定量に必要な細胞数は、数百から数千細胞と考えられる。さらに、LMDに用いるフィルムに酵素阻害剤を予め塗布することにより、安定した測定条件を確立した。 また、固相抽出カラムによるリゾリン脂質選択的な前処理手法として、現在までにODSカラム(BondElutC18)による前処理条件を構築した。今後、ジルコニア修飾前処理用カラム(固相抽出カラム:Hybrid SPE)を用いた際の回収率及び感度等を比較することにより、リゾリン脂質を選択的に精製する前処理法を構築する。また本研究において、固相抽出カラムにおけるリゾリン脂質の保持を安定させる条件を確立するため、原子間力顕微鏡による球状シリカの表面状態の観察を実施したところ、100 nm程度の分解能にて表面画像を得ることに成功した(生体分子計測研究所との共同研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LC/MS/MSによるリゾリン脂質の超高感度検出系に関しては、当初目標としていた数pmolより高い感度にてリゾリン脂質の検出を可能としたことから、測定システムの構築に関する研究は順調に進捗している。これに加え、リン酸基フリーのリゾリン脂質(スフィンゴシン-1-リン酸、S1P)のテーリングを抑えて検出することを可能とする、新たな分析カラムの作成を資生堂の研究協力を受けて成功した。しかしながら、ジルコニアコートシリカ担体カラムを用いるリゾリン脂質の選択的検出法の構築に関しては、最適条件の設定を現在検討中であることから、平成26年度も継続して研究を進める予定である。 LMDによる微量組織からのリゾリン脂質の検出に関しては、脾臓組織を用い、血管組織で覆われた、ろ胞内部を円(輪)状切り出した後、600から4000細胞程度を準備し、メタノール除タンパクのみによる処理にて前処理し、S1Pの検出に成功した。当初目標としていた数千細胞よりも少ない600細胞程度の脾臓組織切片からの検出に成功したことから、研究は順調に進んでいると考えられる。 組織の前処理として、Hybrid SPEを用いる手法を検討中であるが、リゾリン脂質のカラムへの保持状態をより視覚的に観察することを目的とし、原子間力顕微鏡による球状シリカの表面状態の観察に成功している。今後、リン脂質を保持したカラムの状態と溶出したカラムの状態を比較することにより、安定した溶出条件を精査する予定である。 以上のことから、検出系の構築は予定通り進んでいるが、その一方で、より選択的な前処理法の構築に関しては、予定通り進んでいないためおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
リゾリン脂質の超高感度検出系の構築は、添加回収試験に用いるサンプルを準備し、分析法のバリデーション評価を実施している。今後、測定系の信頼度と再現性を評価する予定である。また、標的化合物はS1Pだけでなく、その他のリゾリン脂質(リゾフォスファチジン酸等)の定量に関しても、検討を開始する。 また、構築した定量系をマウス組織切片に応用し、リゾリン脂質の分布局在を示す定量マッピングを作成する。LPA 受容体や S1P トランスポーター発現遺伝子の欠損マウスを用い、局所細胞毎におけるリゾリン脂質を定量し、正常マウスにて作成したマッピングと比較することで分布局在の変化を明らかとする。非染色組織切片のみにてリゾリン脂質の組織分布を明らかにすることは困難である為、連続組織切片を準備し、一方をトランスポーターの染色、他方をLMD切片の作成に用い、結果を統合して解析を進める。また現在、脳及び脾臓以外の組織を用いる測定にも着手しており、今後、組織毎の違いや組織量(細胞数)に応じたリゾリン脂質濃度の直線性を明らかにする予定である。これに加え、リゾリン脂質選択的な前処理法として、Hybrid SPEによるリゾリン脂質の最適溶出条件を決定し、組織切片の安定解析手法を構築する予定である。 さらに、高分解能質量分析装置を用いる組織切片メタボローム解析により、リゾリン脂質のプロファイリングを実施し、代謝物の違いを明らかにする予定である。メタボローム解析の基盤としては、QExactive及びSynapt-G2Siの両者を用い、データベースはHMDB、METLINに加えLipidSearchを組み合わせることにより、脂質選択的な解析を実施する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Overexpression of autotaxin, a lysophosphatidic acid-producing enzyme, enhances cardia bifida induced by hypo-sphingosine-1-phosphate signaling in zebrafish embryo2014
Author(s)
Nakanaga K, Hama K, Kano K, Sato T, Yukiura H, Inoue A, Saigusa D, Tokuyama H, Tomioka Y, Nishina H, Kawahara A, and Aoki J
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Journal Title
Journal of biochemistry
Volume: 155
Pages: 235-241
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Indoxyl sulfate down-regulates SLCO4C1 transporter through up-regulation of GATA32013
Author(s)
Akiyama Y, Kikuchi K, Saigusa D, Suzuki T, Takeuchi Y, Mishima E, Yamamoto Y, Ishida A, Sugawara D, Jinno D, Shima H, Toyohara T, Suzuki C, Souma T, Moriguchi T, Tomioka Y, Ito S, Abe T
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Journal Title
PloS One
Volume: 8(7)
Pages: e66518
DOI
Peer Reviewed
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