2013 Fiscal Year Research-status Report
質量分析法を用いたニトロシル化タンパク質の高感度分析法の開発
Project/Area Number |
25860023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
津元 裕樹 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00409385)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | S-ニトロシル化 / 質量分析 / プロテオーム / 分析化学 |
Research Abstract |
本研究では、一酸化窒素によるタンパク質翻訳後修飾の一つであるシステイン残基のS-ニトロシル(SNO)化について、質量分析を用いて解析するための新規分析法の開発を目的とし、平成25年度は、「新規S-ニトロシル基還元剤の開発」および「S-ニトロシル化部位特異的誘導体化法の開発」の二つの研究項目について実施した。 「新規S-ニトロシル基還元剤の開発」では、汎用されているアスコルビン酸と比較し、SNO基を特異的に還元する化合物探索のためのスクリーニング法の確立を行った。還元効率を評価するため、合成ペプチドおよびそのSNO化体のLC-ESI-MSによる定量を検討した。しかしながら、LC-ESI-MSによりペプチドのm/z値を検出することができず、スクリーニング法の確立には至らなかった。 「S-ニトロシル化部位特異的誘導体化法の開発」では、水溶性トリアリールフォスフィン誘導体TXPTSを用いたSNO化部位特異的誘導体化法、さらにはその分離・精製法の確立を行った。TXPTSによるSNO化ペプチドの誘導体化反応後、各種固相抽出スピンカラムで精製後、MALDI-TOF-MSの正イオンおよび負イオン検出モードを用いて分析した。中性条件下で誘導体化反応後、C18スピンカラムで脱塩を行った結果、正イオン検出モードにおいてSNO化ペプチド由来のm/z値が消失することがわかった。しかしながら、正イオンおよび負イオン検出モードにおけるマススペクトルが非常に複雑になり、反応生成物のm/z値を検出出来ないことがわかった。一方、強陽イオン交換およびC18スピンカラムで精製した場合、ほぼ単一シグナルのマススペクトルが得られることが分かった。しかしながら、反応生成物のm/z値とは一致していないこと、非SNO化ペプチドでも同一シグナルが検出されたことから、SNO化部位が誘導体化されたものではないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「新規S-ニトロシル基還元剤の開発」では、質量分析を用いた還元剤のスクリーニング法を確立してスクリーニングを行い、biotin switch法の還元剤として応用することを目的とした。しかしながら、平成25年度中にスクリーニング法を確立するには至らず、目的を達成することが出来なかった。 また、「S-ニトロシル化部位特異的誘導体化法の開発」では、誘導体化反応条件および分離・精製法を確立し、質量分析により反応生成物を確認することを目的とした。誘導体化反応が進行していることを確認出来たことから、誘導体化反応条件は確立されたと考えられる。しかしながら、平成25年度中に反応生成物を確認するには至らず、目的を達成することが出来なかった。 以上の理由より、現在までの達成度を「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度中に達成出来なかった研究項目について引き続き実施する。「新規S-ニトロシル基還元剤の開発」では、質量分析装置パラメーターの最適化を行い、選択イオンモニタリングモードあるいは多重反応モニタリングモードによる合成ペプチドおよびそのSNO化体の定量法を確立し、還元剤のスクリーニングを行う。スクリーニングにより得られた化合物をbiotin switch法へ応用する。「S-ニトロシル化部位特異的誘導体化法の開発」では、さらに精製方法を検討し、反応生成物の検出を達成する。TXPTSは3つの硫酸基を有する化合物である。そのためイオン化の際にフラグメンテーションを起こし、感度の低下やスペクトルの複雑化を生じている可能性が考えられる。そこで、MALDI-TOF-MSで用いるマトリックスの種類あるいは添加剤についても検討を行うとともに、LC-ESI-MSによる反応生成物の確認も検討する。 モデル化合物による検討が終了次第、平成26年度の計画通り、実サンプルを用いたS-ニトロシル化タンパク質の網羅的解析や修飾部位の解析に応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表および論文発表には至らず、支出費目「旅費」および「その他」の支出が少なくなったため。 物品費として計上し、実験に必要な試薬や消耗品の購入に使用する。
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