2014 Fiscal Year Research-status Report
炎症性肺疾患に対する温度応答DDSの基盤技術に関する研究
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25860026
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田上 辰秋 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (10609887)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リポソーム / ドラッグデリバリーシステム / 経肺投与 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、炎症性肺疾患に有効な温度応答性リポソーム(リン脂質であるDPPCとPEG系界面活性剤であるポロクサマー188から構成されるリポソーム)を用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究を行った。二年目は、申請書に記載したように「リポソーム製剤から放出された薬物の肺内分布および炎症部位における評価法の確立」を構築することを目的とし、肺組織炎症においてリポソームを経肺投与する際、重要となる要因について調査を行った。 肺組織内環境を模した状況の一つとして、気管支・肺胞洗浄液(BALF)中における温度応答性リポソームの安定性において評価を行った。その結果、我々が調製したリポソームは、等張緩衝液中と比較し、BALF中において薬物放出(今回はモデルとして蛍光マーカーのカルセインを使用)が促進されることがわかった。また、炎症誘導したBALF中において、タンパク濃度が顕著に上昇していた。そこで申請者は、BALF中の主要タンパクの一つであるムチンに着目し、ムチン中におけるリポソームの安定性について検討を行った。その結果、ある濃度域において、ムチンの濃度を上げていくにつれて、リポソームからの薬物放出が顕著に促進することがわかった。これに対し、同様に主要タンパクの一つであるアルブミン存在下ではリポソームの薬物放出がほとんど見られなかった。 以上より、肺組織炎症条件下において、リポソームを経肺投与する際、BALF中のムチン濃度がリポソームの安定性ならびに薬物保持を予測する一つの指標となりうる可能性が示唆された。申請者は、肺組織炎症時におけるリポソームのDDS研究を行う際に重要な情報を見い出すことができた。その一方で、検討するにつれて、炎症部位は必ずしも温度上昇を伴わないことが明らかとなってきた。そのため、他の環境応答性DDSを併用するとさらに有用な研究内容になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目における目的は、「リポソーム製剤から放出された薬物の肺内分布および炎症部位における評価法の確立」であった。その結果、気管支・肺胞洗浄液(BALF)中の、ムチン濃度がリポソームの安定性に大きく寄与しており、ムチン濃度がリポソームの安定性予測の指標として期待できる。今後も、多くの要因の検討や体内動態について検討の必要はあると考えられるが、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、申請者が開発した温熱感受性リポソームを用いた検討を行っていく予定である。ただし、調査の結果、肺組織内が炎症している場合、肺組織内環境が様々な観点において変化していることから、温度応答性だけに着目したDDS研究を行っていくのではなく、他の環境応答性を利用したDDSの研究を行っていくことがより有用な戦略となると考えられる。
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Causes of Carryover |
試薬を安価に購入することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高額ではないため(<50000円)、当初の実験計画に従い研究を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)