2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25860027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
江川 祐哉 城西大学, 薬学部, 准教授 (90400267)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェニルボロン酸 / グルコース / ポリシュードロタキサン / シクロデキストリン / 分子ネックレス / 人工膵臓 |
Research Abstract |
分子ネックレス構造による人工膵臓分子マシンを実現するため,平成25年度は,グルコース高親和性のフェニルボロン酸(PBA)修飾シクロデキストリン(CyD)の調製を行い,分子ネックレスへの適用を試みた。様々なPBA誘導体をCyDに導入を試みたなかで,ニトロ基を有するフェニルボロン酸(NPBA)を,γ-CyDに導入することに成功した。NPBA はニトロ基の電子吸引性により,ボロン酸の酸性度が高く,グルコースへの結合力が高いと期待される。 NPBA-γ-CyDとナフタレン修飾ポリエチレングリコール(Naph-PEG)を水中で共存させたところ,Naph-PEGがいくつものNPBA-γ-CyD を貫いたポリシュードロタキサン,すなわち分子ネックレスが得られた。1H-NMRにより化学量論比を調査したところ,NPBA-γ-CyDを用いた分子ネックレスは,一本鎖の分子ネックレスであると推測された。過去の未修飾γ-CyDとPEGを組み合わせた分子ネックレスは二本鎖であることから,本研究課題で得られたNPBA-γ-CyDとNaph-PEGによる分子ネックレスは,γ-CyD誘導体を用いながら一本鎖であるという新しいタイプの分子ネックレスである可能性が高く,超分子化学的にも興味深い。 NPBA-γ-CyDとNaph-PEGによる分子ネックレスは水中で不溶であったが,グルコースを共存させることにより崩壊した。各濃度のグルコース溶液中で崩壊性を評価したところ,NPBA-γ-CyDによる分子ネックレスは,ニトロ基のない場合に比べ,より低濃度のグルコースに応答し,崩壊することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は「グルコース高親和性PBA-CyDの調製と分子ネックレスへの適用」を研究計画としており,グルコース高親和性のPBA-CyDを得るために,CyDへのPBA誘導体の導入法の開発に取り組んだ。その検討の中で,カルボン酸を持つPBA誘導体を塩化チオニルで処理して酸塩化物とし,これをγ-CyDの一級水酸基にエステル結合で導入する方法を確立できた。この反応の終了時点では一点修飾体の他,多点修飾体が混在しているが,これらをクロマトグラフィーにより分離することにも成功した。 電子吸引基を持つPBA誘導体は,糖に対し高い結合力を持つことが報告されていることから,3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸を塩化チオニルで処理して酸塩化物とし,これをγ-CyDの一級水酸基にエステル結合で導入し,一点修飾体を精製することに成功した。このニトロフェニルボロン酸修飾シクロデキストリン(NPBA-γ-CyD)は,糖類に対し高い結合性を持ち,かつ水溶性も高く,分子ネックレスの調製にも適していた。もう一つのアプローチとして,2つのPBA部位で1つのグルコースを結合することにより,グルコース親和性を向上させる方法も検討した。4-カルボキシフェニルボロン酸を塩化チオニルで処理し,多点修飾体を得ることができた。今後,分子ネックレスの調製に使用する予定である。以上の結果から,平成25年度の計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に成功したNPBA-γ-CyDとNaph-PEGによる分子ネックレスについて,詳細な構造解析を行う。未修飾γ-CyDによる分子ネックレスはPEG鎖を二本通すことが知られているが,NPBA-γ-CyDによる分子ネックレスは一本鎖であることが示唆されている。これを証明するために,各種構造解析を行う。また,一本鎖の分子ネックレスがどうのように調製されるかを調査するか,形成過程の調査も実施する。得られた分子ネックレスの構造を明らかにすることにより,分子ネックレスの適切な調製方法について,知見が得られると考えている。また,多点修飾体のPBA-CyDについても分子ネックレス調製を試みる。 これまでにNaph-PEGを用いての分子ネックレスの調製に成功しているが,今後の検討では,用いるPEGの末端の化学構造を変えた検討も実施する。ナフタレンのようにCyD空孔と親和性の高い修飾を末端に持つPEGにより、分子ネックレス形成が促進されることが知られている。分子ネックレスの調製が難しいPBA-CyD誘導体であっても,PEG末端の化学構造を工夫することにより分子ネックレスを調製できる可能性がある。さらに,分子ネックレスがグルコースにより崩壊する際に,PEG末端の修飾基の違いにより,崩壊速度を変化させることができると考えている。 これらのPBA-CyD誘導体と末端修飾PEGによる研究成果を基に,PEG化修飾インスリンをグルコース高親和性PBA-CyDを組み合わせて分子ネックレスとし,血糖値に応じインスリンを放出するドラッグデリバリーシステムとしての機能を評価していく予定である。
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