2013 Fiscal Year Research-status Report
癌深部治療を標的とした近赤外光応答性ナノC60光増感剤の構築
Project/Area Number |
25860034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
庵原 大輔 崇城大学, 薬学部, 助教 (40454954)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フラーレンC60 / シクロデキストリン / 蛍光色素 / ナノ粒子 / 活性酸素種 / がん光線力学療法 |
Research Abstract |
C60 は既存の光増感剤と比較して非常に高い量子収率を持つことから、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカルなどの活性酸素種を効率よく生成する光増感物質として注目を集めている。本研究では、より深部のがんに対しても有効な光増感剤の開発を目的とし、C60 ナノ粒子の表面を長波長の光吸収を持つ蛍光色素で被覆したC60ナノ粒子を調製し、その物理化学的特性・光吸収特性・生物活性を明らかにし、がん光線力学療法において近赤外光で効果的に励起可能な光増感剤を構築する。C60ナノ粒子は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと混合粉砕することで調製し、C60ナノ粒子への蛍光色素の被覆は π-π相互作用により、C60ナノ粒子に蛍光色素溶液を添加後、超音波照射することで調製した。C60ナノ粒子存在下では、ローズベンガルやローダミンBの蛍光スペクトルはC60濃度依存的に消光し、ナノ粒子表面への蛍光色素の吸着が示唆された。この蛍光色素被覆C60ナノ粒子の一重項酸素生成能は蛍光色素の吸収波長(550 nm)の光照射下において著しく増大した。一方、γ-CyD を用いてC60を可溶化した C60/γ-CyD包接複合体では蛍光スペクトルの消光は僅かであり、一重項酸素生成の増大も見られなかった。このことから、光励起した蛍光色素からC60ナノ粒子へエネルギーの移動が起こり、波長選択的な一重項酸素生成能を示したものと推察される。本研究は優れた光増感作用を有し、ナノマテリアルとして注目を集めている C60 をナノ粒子化し、蛍光色素を用いてその光吸収特性を制御するものであり、蛍光色素被覆C60ナノ粒子は次世代型の光増感剤として有力な候補物質になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではC60ナノ粒子を基盤としたがん光線力学療法において効果的な近赤外領域でも励起可能な光増感剤を構築することを目的として検討を行った。当初の予定通り、蛍光色素被覆C60ナノ粒子を調製し、その蛍光スペクトル変化からC60ナノ粒子のエネルギー受容特性を明らかにした。また、波長選択的に一重項酸素生成能を示すことを明らかにした。以上より、近赤外領域でも効果的に励起可能な光増感剤の構築は順調に進展中である。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光色素被覆C60 ナノ粒子の近赤外光照射下でのin vitro および in vivo 抗腫瘍効果を明らかにする。すなわち、蛍光色素被覆による細胞障害活性の増強効果ならびに波長選択的な細胞障害活性を明らかにする。in vivo 抗腫瘍効果は、担癌マウスに蛍光色素被覆 C60ナノ粒子を投与し、近赤外光を照射した時の腫瘍体積の変化をコントロール群(生理食塩液、光照射なし)およびC60ナノ粒子と比較し、評価する。
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