2013 Fiscal Year Research-status Report
一次繊毛の膜輸送に関与する新規遺伝子の探索と機能解析
Project/Area Number |
25860044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 洋平 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90568172)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 中心体 / 低分子量GTPase / Rab-Like / バルデービードル症候群 / BBSome |
Research Abstract |
ヒトの細胞には運動性繊毛と非運動性の繊毛(一次繊毛)が存在する。運動性繊毛(鞭毛)を持つ精子は鞭毛の運動によって卵子まで到達し受精する。男性不妊の原因として精子の運動に異常がある場合が多い。一次繊毛は、化学的シグナル、光刺激、機械刺激などさまざまなシグナルを感知する細胞のアンテナとしての働きを持っている。一次繊毛の異常は、嚢胞腎、網膜変性、内臓逆位、多指症、肥満、精神遅滞などさまざまな疾患の原因になる。本研究は新規の繊毛関連遺伝子を同定し、その機能を解析することで繊毛の異常に起因する病気の分子メカニズムの解明を目指している。 低分子量GTPaseのRab-Likeファミリー(RabL2-RabL5)は繊毛の形成時に発現が上昇することや、繊毛・鞭毛を持つ生物種で保存されていることから、繊毛・鞭毛の形成やタンパク質輸送などに関与している可能性がある。そこでRab-Likeファミリーの遺伝子をクローニングしHEK293T細胞に発現させ、共免疫沈降法によって結合タンパク質の探索を行った。その結果、RabL2BがCentrosomal protein 19kDa(Cep19)と結合することを発見した。Cep19は中心体に局在するタンパク質として同定されていたが、その機能は不明であった。繊毛や鞭毛の機能調節に関与すると考えられるRabL2と中心体に局在するCep19との相互作用には重要な機能が隠されていると考えている。現在までに、Cep19のRabL2B結合領域と中心体局在領域を明らかにし、RabL2BとCep19が一次繊毛の基底小体で共局在していることを明らかにした。今後はRabL2B-Cep19複合体のエフェクタータンパク質の探索を行い、繊毛・鞭毛における機能解析を細胞と個体レベルで進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は低分子量GTPaseのRab-Likeファミリー(RabL2-RabL5)の結合タンパク質の探索を共免疫沈降法を用いて行った。その結果、RabL2BがCep19と結合することを発見した。その後の実験によりCep19のRabL2B結合領域と中心体局在領域を明らかにした。また、RabL2BとCep19は一次繊毛の基底小体で共局在することから、一次繊毛の機能調節に関与するタンパク質複合体である可能性が高い。したがって、本年度の目標であった新規の繊毛関連タンパク質の同定については達成できたと考えている。RabL2B-Cep19複合体の機能解析は次年度に行う予定である。 Rab-Likeファミリーの実験と並行して、バルデービードル症候群の原因遺伝子であり、BBSome複合体のサブユニットであるBBS1とBBS2の結合タンパク質の探索を酵母2ハイブリッド法を用いて行った。今のところBBS1とBBS2に結合するタンパク質で繊毛の機能と関係があると考えられるタンパク質を同定できていない。しかし、BBSome複合体を形成する8つのサブユニット間の相互作用を共免疫沈降法によって総当たりで調べたところ、BBIP10がBBS4とBBS8の両方と結合するという、これまでに報告されていない相互作用を見出すことができた。当初の目的とは異なるが、BBSome複合体の構築メカニズムの解明につながる発見であると考え研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を行っている間に2つの論文が発表された。1つは突然変異マウスの不妊の原因がRabL2のD73G変異であることを発見したもので、もう1つは、Cep19ノックアウトマウスの精巣と精子が異常になることや肥満になることを示したものである。どちらも精子の運動異常という共通点があるが、なぜそのような異常が生じるかという分子メカニズムは全く解明されていない。本研究の実験結果と併せて考えると、RabL2とCep19が精子の運動において協調的に機能する可能性が高い。そこで、今後は精子の運動異常や肥満といった病態が引き起こされる分子メカニズムの解明を目指して以下に述べる実験を行う。 1.RabL2のエフェクタータンパク質の探索と機能解析 低分子量GTPaseは分子スイッチであるので、その機能を解明するためにはエフェクタータンパク質を同定することが必須である。GST-Cep19とHis6-RabL2を大腸菌で発現させ、複合体の状態で精製しアフィニティーカラムを作製する。エフェクタータンパク質の探索の材料にはマウス精巣から核除去後上清を調製して用いる。カラムから溶出した結合タンパク質は質量分析によって同定する。同定したタンパク質と一次繊毛との関係について分子レベルと細胞レベルの解析を行う。 2. RabL2-Cep19複合体とエフェクタータンパク質のノックアウトフィッシュの作出と表現型解析 繊毛病のモデル動物として有用なゼブラフィッシュとCRISPR/CAS9システムを利用し、RabL2、Cep19、エフェクタータンパク質のノックアウトフィッシュを作出する。KOフィッシュの精巣や精子の形態に異常がないかを観察し、精子の運動や受精能の有無について調べる。また、肥満になるかどうかを観察し、肥満になった場合には、摂食量、運動量、脂肪量、摂食ホルモンのレプチンなどの血中レベルの測定を行う。
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