2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性疼痛に伴う精神症状における脳内炎症の関与と抗炎症性脂質レゾルビンD1の有用性
Project/Area Number |
25860060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
出山 諭司 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30634993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レゾルビンD1 / レゾルビンD2 / 抗うつ作用 / リポポリサッカライド / PI3キナーゼ |
Research Abstract |
本研究では、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の抗炎症性脂質レゾルビンD1(RvD1)が、慢性疼痛に伴う脳内炎症を抑制し、抑うつ・不安症状の改善に有用であるか否かを明らかにすることを目的とする。本年度は、まずRvD1が脳内において炎症抑制作用を示すか否かを明らかにするために、マウス海馬スライス培養系およびマウス大脳皮質線条体スライス培養系を用いて、リポポリサッカライド(LPS)処置による炎症関連分子(炎症性サイトカイン・ケモカインなど)mRNA発現上昇に対するRvD1処置の効果を検討した。LPS刺激によるIL-1β、TNF-α、MCP-1などのサイトカイン・ケモカインmRNA発現上昇は、RvD1処置による影響を受けなかった。また、尾懸垂試験を用いて、RvD1、並びにRvD1と同じくDHA由来の生理活性脂質であるRvD2の側脳室内投与が、LPS(0.8 mg/kg、i.p.)誘発うつ病様行動に与える影響を検討した。LPS投与の22時間後にRvD1およびRvD2を側脳室内に投与し、その2時間後に尾懸垂試験を行ったところ、RvD1およびRvD2はいずれもLPSによる無動時間延長を有意に抑制した。また、同様のタイムコースでオープンフィールド試験を用いて、RvD1およびRvD2側脳室内投与およびLPS投与がマウスの自発運動量に及ぼす影響を検討したところ、いずれの処置もマウスの自発運動量に影響を及ぼさなかった。以上より、RvD1の抗うつ作用には、炎症抑制作用とは別のメカニズムが関与している可能性が示唆された。そこで、RvD1の抗うつ作用メカニズムの探索を開始し、RvD1の抗うつ作用にはPI3キナーゼ活性化が関与しているが、RvD2の抗うつ作用にはPI3キナーゼが関与していないことを示唆する結果を得た。次年度は、RvD1の抗うつ作用メカニズムに関して詳細な解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定と異なり、RvD1の抗うつ作用に炎症抑制作用とは別のメカニズムの関与が示唆されたことから研究計画を一部変更したが、RvD1の抗うつ作用にPI3キナーゼ活性化が関与していることを見出すとともに、RvD1とRvD2の抗うつ作用には別の情報伝達経路の関与を示唆する興味深い結果が得られた点を考慮し、研究の進捗状況はおおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の想定と異なる結果が得られたことから、今後はまずRvD1の抗うつ作用メカニズムに関して検討を行う。具体的には、PI3キナーゼの下流でRvD1の抗うつ作用に関与する分子についてLPS誘発うつ病モデルマウスを用いた行動薬理学的解析および生化学的解析を行う予定である。さらに、慢性疼痛モデル動物を用いて、RvD1が慢性疼痛による抑うつ症状にも有効であるかを検討するとともに、その作用にLPS誘発うつ病モデルマウスの場合と同様のメカニズムが関与しているか否かについて検討を行う予定である。
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