2014 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛に伴う精神症状における脳内炎症の関与と抗炎症性脂質レゾルビンD1の有用性
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25860060
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
出山 諭司 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30634993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レゾルビンD1 / レゾルビンD2 / 抗うつ作用 / mTOR経路 / ω-3系脂肪酸 / DHA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、うつ病や不安障害などの精神疾患に脳内炎症が関与していることが明らかにされている。本研究は、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の抗炎症性脂質レゾルビンD1(RvD1)が慢性疼痛に伴う脳内炎症を抑制し、抑うつ症状の改善に有用であるか否かを明らかにすることを目的とする。昨年度、RvD1及びRvD2が抗うつ作用を有することを明らかにしたが、脳スライス培養系において、LPSによる炎症関連分子発現上昇に対してRvD1は抑制作用を示さなかった。そこで、RvD1、RvD2の抗うつ作用メカニズムの探索を始め、PI3キナーゼ活性化がRvD1の抗うつ作用には関与しているが、RvD2の抗うつ作用には関与していないことを示唆する結果を得た。本年度は引き続き、RvD1及びRvD2の抗うつ作用メカニズムについて尾懸垂試験を用いて検討を行った。RvD1の抗うつ作用は、PI3キナーゼ阻害薬LY294002、MEK阻害薬U0126、mTOR阻害薬Rapamycin投与により有意に抑制された。一方、RvD2の抗うつ作用は、U0126及びRapamycin投与によって有意に抑制されたが、LY294002投与の影響を受けなかった。以上より、RvD1の抗うつ作用には、PI3キナーゼ・ERK/mTOR経路の活性化が重要であること、並びにRvD2の抗うつ作用にはERK・mTOR経路の活性化は重要であるが、PI3キナーゼは関与しておらず、RvD1とは一部作用メカニズムが異なることが示唆された。今後、RvD1及びRvD2が、慢性疼痛モデル動物の抑うつ症状にも有効であるかについて更に検討を行う必要はあるが、本研究成果は、鎮痛作用を有することが報告されているRvD1及びRvD2が抗うつ作用をも有しており、「身体」と「心」の両方を苦痛から解放できる新たな疼痛治療薬となる可能性を示唆するものである。
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