2013 Fiscal Year Research-status Report
メタボローム分析とインフォマティクスによる漢方システム理論の包括的解析
Project/Area Number |
25860085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
岡田 岳人 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (60412392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 漢方薬 / 生薬 / メタボローム / 多変量解析 / データベース |
Research Abstract |
生薬の組合せによって製される漢方薬は、漢方に独特の診断基準である虚/実(体質)、陰/陽(病気の進行状態)などの「証」に基づいて患者に処方される。本研究は、漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3者について、それらの複雑な相関理論を明らかにし、漢方処方システムの包括的理解を目指すものである。本年度は、主に以下の2点について研究を遂行した。 (1)漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の相関解析: 漢方方剤(約1,200処方)の構成生薬量を変量としたPrincipal Component Analysis(PCA)を行い、方剤分類を行った。その結果、各グループ内の漢方方剤は、虚/実、陰/陽への適用に高い近似が認められた。更に、各漢方方剤の化学分析から得られたメタボローム(生物資源に含有されている代謝物の総体)データのPCAにおいても、同様の結果が示された。逆に、漢方方剤の構成生薬量の側から、その方剤の虚/実への適用を予測するため、Partial Least Squares(PLS)回帰分析を行った。その結果、98%以上の漢方方剤について正確に虚/実への適用を予測することができた。 (2)漢方方剤データベース構築とデータの多変量解析: 補血、強壮、鎮静、鎮痛などの「証」を治療する漢方方剤に配合されていることが多い生薬トウキに着目し、「君臣佐使(漢方方剤内における生薬の役割)」に軸を置いた漢方方剤データベース(約70処方)を構築した。データの多変量解析としてPCA、PLS-Discriminant Analysisを行い、トウキの「君臣佐使」を基に漢方方剤を分類した。また、その分類への構成生薬の寄与を、因子負荷量を基に整理した。更に、トウキの配合量を意図的に加減変化させた場合の漢方方剤の虚/実への適用変化が、PLS回帰分析によって予測されうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3者について、それらの複雑な相関を明らかにするために、漢方薬治療システムの多変量解析やデータベース構築を主体としたインフォマティクスと、漢方方剤のメタボローム分析を進めてきた。なお、研究結果の実医療への応用という観点からは、そのモデル構築の途上にあるものと考えられる。また、構築したデータベース類については、公開のための適切な時期(例えば、論文公表後)と方法を検討中である。総合的には、漢方薬治療のシステム理論を包括的に理解するための知見が得られつつあることから、1年間での研究進捗は概ね良好であったものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究過程から、本研究に特に重要なのは、漢方薬治療システム情報や漢方方剤メタボローム分析の膨大なデータを、インフォマティクスによっていかに効率よく処理し、目的に沿った結果を導き出せるかという点にあるものと考えられる。従って、インフォマティクスに関するハード/ソフト両面での技術・研究環境および応用力の向上が、本研究を推進していくために重要なものと考えられる。また、研究に必要な実験データや情報は、必要に応じて追加していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主には物品費の中の消耗品費、およびその他の費目について、当該年度の研究遂行に関しては、予想を越えて基盤的経費からも支出を賄うことができたため。 今後の研究推進方策に沿って、主には物品費として使用させて頂くことを検討している。また、研究の必要に応じてその他の費目として支出させて頂くことを検討している。
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