2014 Fiscal Year Research-status Report
メタボローム分析とインフォマティクスによる漢方システム理論の包括的解析
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25860085
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
岡田 岳人 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (60412392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 漢方薬 / 生薬 / メタボローム / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生薬の組合せによって製される漢方薬は、漢方医学に独特の診断基準「証」に基づいて処方される。本研究は、その漢方処方システム理論の包括的な理解を目指すものである。特に、漢方処方システムの基盤である漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3要素に着目し、それらの複雑な相関関係について解析を進めている。これまでに、「証」については虚/実(体質)、陰/陽(病気の進行状態)に焦点を当て、複数の漢方方剤とそれらのメタボローム(方剤を構成する生薬に含有されている化学成分の総体)との相関解析を行ってきた。また、漢方方剤内における構成生薬の役割・位置付けを表す概念である「君臣佐使」に着目した解析も進めてきた。 そしてH26年度は、「証」については気・血・水の概念も含めて、まず初めに、複数の漢方方剤を対象としたデータベース構築を行った。このデータベースを用いることにより、漢方方剤の気・血・水などの「証」への適用や構成生薬について、目的とする情報を規則的に抽出することが可能になった。次に、データベース内の膨大な量の情報を解析するため、多変量解析を行った。ここでは特に、Principal Component Analysis(PCA)とPartial Least Squares Projection to Latent Structures(PLS)回帰分析を主体とした解析を行った。これらの多変量解析によって、漢方方剤のバリエーションを集約して可視化すると共に、そのバリエーションに寄与する因子について解析した。そして、漢方方剤の構成生薬量を意図的に増減させた場合の、その漢方方剤の「証」への適用変化をシミュレーションした。これらの結果から、漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3要素の相関関係を解析することによって、漢方処方システムに潜在している複雑な規則性の理論的考察が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多変量解析やデータベース構築を主体としたインフォマティクスと、メタボローム分析により、漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3要素について、それらの複雑な相関関係を解析し、漢方処方システムに潜在している複雑な規則性の理論的考察を進めた。研究成果の公表については、これまで学会発表に留まっているものの、現在、学術論文の作成・投稿に着手している。総合的には、H25年度からの研究が進展し、漢方処方システム理論を包括的に理解するための知見がより蓄積された一方で、本研究の更なる進展と成果の公表が必要な状況であり、研究進捗はやや遅れているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、漢方処方システム理論を明らかにすることを目的に、漢方方剤-「証」-多様な薬効化学成分の3要素に着目した相関解析を進めてきた。今後も、本研究に必要な実験データや情報は、必要に応じて追加していく予定である。加えて、ハード・ソフトの両面からインフォマティクス研究環境の質をより高め、本研究により構築したデータベースに蓄積されている膨大な情報を解析するための技術力・応用力を向上させていく必要があると考えている。また、学会・シンポジウム発表、学術論文の公表を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究成果を原著論文として投稿したところ、査読の過程で改良点を指摘され、漢方方剤の処方情報とメタボロームの追・再解析、データベースの再構築および更新を行うこととしたため、研究計画の延長に応じた未使用額が生じた。加えて、当該年度の研究遂行に関しては、主には物品費の中の消耗品費、およびその他の費用について、それらの一部を基盤的経費から予想を越えて支出できたことも挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の、今後の研究の推進方策に沿って使用させて頂く計画である。主には、漢方方剤の処方情報とメタボロームの追・再解析、データベースの再構築および更新、学術論文の投稿・公表、学会・シンポジウムでの発表に関わる経費を想定している。また、データの解析と管理、およびデータベース作成に必要なハード・ソフト類の整備と、新たに使用するコンピュータの導入についても検討している。
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Research Products
(1 results)