2013 Fiscal Year Research-status Report
基質配列に基づく構造活性相関研究を通した新規BACE1阻害剤の開発
Project/Area Number |
25860093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小林 数也 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80647868)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / BACE1 / 遷移状態アナログ / ヒドロキシエチルアミン / 閉環メタセシス |
Research Abstract |
申請者は、アルツハイマー病根本治療薬の開発を最終目標として、新規βセクレターゼ(BACE1)阻害剤の開発に着手した。本年度は、研究実施計画に基づきBACE1基質ペプチドの配列をベースに、(1)遷移状態アナログとしてヒドロキシエチルアミン(HEA)を用いたP1’部位の最適化と、(2)架橋構造の導入による構造の固定化について検討を行った。 (1)HEAモチーフに関しては、これまでの検討から、ヒドロキシ基及びそのβ位置換基の立体化学が周辺構造や活性に大きな影響を及ぼすことが示唆されているため、まずβ位にメチル基を有するものと有しないものについて、それぞれの立体異性体を選択的に合成し、それらの活性評価を行うことで、最適構造の同定を行った。その結果、ヒドロキシ基の立体化学は(R)-体が(S)-体よりも20倍以上の高活性を示すこと、メチル基の立体化学に関しては(R)-体が(S)-体よりも高活性であるものの、メチル基がない方がより高い活性を示すことが明らかとなった。 (2)(1)で見出した高活性立体配置を有するHEA型BACE1阻害剤をベースに、P1側鎖とP3側鎖を架橋した環状BACE1阻害剤の開発を行った。側鎖架橋については、側鎖末端にアルケンを有するアミノ酸ユニットをHEA型BACE1阻害剤に導入し、閉環メタセシス反応を行うことで形成することとした。まず分枝のない単純化した構造について検討を行うこととし、必要なアミノ酸ユニットの立体選択的合成を行った。得られたアミノ酸ユニットをHEA型BACE1阻害剤に導入し、環化前駆体に対して閉環メタセシス反応を行ったところ、目的の分子量を有する化合物の生成が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究目的」に記載した、(1)「HEA-P1’部位の最適構造の同定」に関しては、本年度の研究においてHEAユニットの高活性立体配置を同定することに成功した。また、この検討過程において、P1’ユニットを簡便にHEAユニットに導入できる合成法を見出しているため、続くP1’部位の構造最適化研究もスムーズに遂行できるものと考えている。 研究目的(2)「環状HEA型BACE1阻害剤の構造活性相関研究」に関しては、本年度の検討において環状HEA型BACE1阻害剤の合成法を確立する段階まで研究を進めることができた。本合成法の汎用性を確認することができれば、環サイズに関する検討は容易に行えるものと考えている。一方、Heck反応を利用した環形成を行う場合には、非天然アミノ酸ユニットが必要になるが、その一部は本年度合成に成功したアミノ酸ユニットをそのまま利用できることから、こちらに関しても比較的素早く研究を遂行できると考えている。 以上の点から、本年度の研究はおおむね順調に進行したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)HEA-P1’部位の構造最適化研究では、高活性立体配置のHEAユニットに基づいてP1’部位の最適化を行う。P1’部位の構造については、これまでに得られているHEA型阻害剤とBACE1とのX線結晶構造を基盤にデザインを行うことで、研究の効率化を図る。P1’部位の導入に関してはすでに効率的な合成法を見出しているため、迅速な研究の推進が可能であると考えている。 (2)環状HEA型BACE1阻害剤の構造活性相関研究では、閉環メタセシスを用いた合成法により側鎖長の異なるアミノ酸ユニットから環状阻害剤を合成し、その活性評価を行うことで、環サイズの最適化を行う。また、これと並行してHeck反応を利用した環状阻害剤合成法の確立を行い、架橋構造の最適化を図る。 (3)(2)で得られる高活性環状BACE1阻害剤のBACE1との共結晶を作成し、X線結晶構造解析を行うことで、各官能基間の距離情報を得る。得られた距離情報を基に適当な複素環をコア構造として選択し、(1)で得られたP1’構造を含む各官能基を配置することで低分子BACE1阻害剤を創出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究では、(1)「HEA-P1’部位の最適構造の同定」及び(2)「環状HEA型BACE1阻害剤の構造活性相関研究」の両者において、効率的合成法の確立を主軸に研究を遂行し、大規模な活性評価試験を行わなかったため、それらに関する支出が抑えられた結果、次年度使用額が生じた。 本年度の研究により確立した効率的合成法を用いて、各種誘導体の合成を行い大規模な活性評価試験を行う。次年度使用額は、当初の予定通りこれら活性評価試験に関する費用として使用する。翌年度分として請求した助成金は、得られた高活性誘導体の構造解析、及び低分子化研究のための費用として使用する。
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