2014 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症モデルマウスを用いたアルコール離脱症状発現メカニズムの解明
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25860098
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
石橋 拓也 城西国際大学, 薬学部, 助手 (20555825)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルコール依存症 / 離脱症状 / 不安症 / うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコール依存症の離脱症状として起きる不安症状やうつ症状の発症メカニズムを、アルコールの標的と考えられるGABA(A)受容体およびNMDA型グルタミン酸受容体を切り口に解析することが本研究の目的である。GABA(A)受容体には即自的に作用するSynaptic GABA(A)受容体と持続的に作用するExtrasynaptic GABA(A)受容体がある。この2つのタイプのGABA(A)受容体やNMDA受容体がアルコール離脱時の不安様症状発現に関与するかを調べること、およびこれらの受容体がエピジェネティックに発現制御されているかを調べることに本研究の主眼を向けた。Syanptic GABA(A)受容体を構成する代表的なサブユニットであるα1を含むGABA(A)受容体のアゴニストであるゾルピデムをアルコール離脱時のマウスに投与したところ、アルコール離脱時の不安様症状を抑制することを見出した。アルコール離脱時の不安様症状の発現にα1を有するGABA(A)受容体が関与すると考えられる。Extrasynaptic GABA(A)受容体アゴニストTHIPもアルコール離脱時の不安様症状を緩和することから、両方のタイプのGABA(A)受容体が不安様症状に関係していることが考えられる。 アルコール離脱時のうつ様症状を尾懸垂試験により評価したところ、アルコール非投与マウスに比べて無動時間が増加し、赤外線行動解析の結果、アルコールを長期摂取したマウスの1日の行動量が減少することも見出し、アルコール離脱したマウスがモチベーションの低下を生じていることが明らかになり、うつ様症状として評価できると考えている。 今後アルコール離脱時のうつ様症状の発現にGABA(A)受容体が関与しているかを調べること、およびGABA(A)受容体の量がエピジェネティックな遺伝子発現制御を受けているのか解析する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではアルコール離脱時の不安症状やうつ様症状にGABA(A)受容体やNMDA型グルタミン酸受容体が関与するかを調べ、これらの受容体のサブユニットをコードする遺伝子の発現変化を解析することを目的としている。 アルコール離脱時の不安様症状を示すモデルマウスを作製し、明暗箱試験により評価する実験系を確立した。また、このモデルマウスはアルコール離脱時に行動量が減少することや尾懸垂試験時の逃避モチベーションが減少するなどのうつ様症状を示すことも分かった。アルコール離脱時の不安様症状がα1サブユニットを含むGABA(A)受容体アゴニストであるゾルピデムで抑制される結果を得られた。Extrasynaptic GABA(A)受容体アゴニストのTHIPでアルコール離脱時の不安様症状を抑制できることと併せて、アルコール離脱時の不安様症状の発現にSynaptic GABA(A)受容体やExtrasynaptic GABA(A)受容体が関与することを示唆している。染色体のヒストン脱アセチル化酵素であるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤トリコスタチンAもアルコール離脱時のマウスの不安様症状を抑制することから、HDAC阻害剤がGABA(A)受容体のサブユニットをコードする遺伝子の発現を制御するかを調べる方針である。 うつ様症状の発現メカニズムも解明する方針であるが、これにGABA(A)受容体が関与しているかは未解析である。アルコールやHDAC阻害剤がアルコール依存症のモデルマウスの脳内でGABA(A)受容体のサブユニットのタンパク質レベルやmRNAレベルを変化させるか、まだ解析しきれていないため「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
アルコール離脱時のマウスに生じるうつ様症状の発現にGABA(A)受容体が関わっているか、アルコール依存症モデルマウスにGABA(A)受容体アゴニストを投与して尾懸垂試験や赤外線行動量解析により調べる。 アルコール長期投与マウスの脳内でGABA(A)受容体のα1等のサブユニットが量的に変化しているか、タンパク質レベルおよびmRNAレベルで解析する。その上で、HDAC阻害剤がGABA(A)受容体の量を変化させることによりアルコール離脱時の不安様症状を押さえるのかを調べるため、アルコール依存症モデルマウスにHDAC阻害剤トリコスタチンAを投与し、脳内のGABA(A)受容体のサブユニットの発現を解析し、アルコール非投与マウスと比較する。また、HDAC阻害剤がGABA(A)受容体のサブユニットの発現を変化させることが分かった場合はアルコール離脱時のマウス脳内からクロマチン画分を抽出し、GABA(A)受容体のサブユニットをコードする遺伝子の染色体領域のヒストンのアセチル化やメチル化の状態をクロマチン免疫沈降法により定量し、アルコール非処理マウスと比較する。
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Causes of Carryover |
アルコール依存症モデルマウスの不安症状やうつ様症状などの離脱症状を評価する実験系の確立が予定より遅れた。そのためにアルコール離脱症状にGABA(A)受容体やNMDA受容体が関与するか薬理学的に解析する実験や、アルコールやHDAC阻害剤によるマウスのGABA(A)受容体やNMDA受容体の発現量の変化を解析する実験の遂行が遅れ、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アルコール離脱時の不安症状やうつ様症状を引き起こすメカニズムをGABA(A)受容体を切り口に解析する。アルコール依存症モデルマウスにGABA(A)受容体アゴニストを投与し、行動解析を行ってアルコール離脱時のうつ様症状の発現にGABA(A)受容体が関わっているかを検討する。また、アルコール離脱のマウスの脳内でアルコールやHDAC阻害剤投与がGABA(A)受容体の発現に及ぼす影響をタンパク質レベルやmRNAレベルで解析する。アルコール離脱症状の発現に関係し、アルコールやHDAC阻害剤により発現量に変化が見られたGABA(A)受容体のサブユニットをコードする遺伝子がヒストンのアセチル化などのエピジェネティックな影響を受けているかクロマチン免疫沈降により、解析する。
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