2013 Fiscal Year Research-status Report
脳性小児麻痺治療薬脳指向性エリスロポエチン含有PLGAナノスフェア製剤の開発
Project/Area Number |
25860131
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
櫨川 舞 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (10509186)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノスフェア / エリスロポエチン / 脳性小児麻痺 / 表面電荷 / 脳移行性 / 徐放性製剤 / 自己修復 / 初期放出 |
Research Abstract |
平成25年度は、脳性小児麻痺治療薬を目指したエリスロポエチン含有乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノスフェア製剤の調製方法について検討を行った。 本研究室の従来法に従い、w/o/wエマルション型エリスロポエチン含有PLGAナノスフェアを調製し、整粒性に富んだ表面構造の滑らかな粒子を得た。さらに、従来法に加えて外水相にキトサンまたはカチオン性界面活性剤を添加することで非添加製剤より小さな粒子径を有する粒子を得ることに成功し、特にキトサンが最も良好であった。 次に、脳移行性の評価としてBBBキットを使用しBBB透過性の確認を行った。マイクロスフェアよりもナノスフェアはより高いBBB透過性を示し、キトサン添加ナノスフェアはキトサン非添加ナノスフェアと比較し有意に高いBBB透過性を示した。今後、粒子のゼータ電位の測定を行い、キトサンを添加したことによる表面電荷の変化を確認予定である。表面電荷の確認により、キトサン添加によって表面電荷が変化した結果、細胞内取り込み効果が高まることを予想している。 また、薬物の徐放化を目的に低濃度で血中濃度を維持するための本研究における製剤開発で重要なことは、投与初期の薬物放出を抑制し副作用を軽減することにあり、薬物の初期放出の抑制の工夫の一つとしてPLGAの自己修復作用を利用した製剤調製を行った。乳化後の撹拌過程においてガラス転移点以上の温度で撹拌を行うことで、粒子表面に生じる微細な細孔が閉鎖し、薬物放出が抑制されることを見出した。自己修復作用を利用した製剤は、SEM画像撮影により粒子表面の細孔が減少していること、薬物放出試験により初期放出が抑制されていることを確認した。自己修復作用を利用して薬物の初期放出が抑制できた事実は、今後の徐放性製剤開発への応用が期待できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究室の従来法に従った実験であり、w/o/wエマルション型エリスロポエチン含有PLGAナノスフェアの調製が早期段階で可能であった。さらに、予備実験ですでに確認していた外水相にキトサンまたはカチオン性界面活性剤を添加することで非添加製剤より小さな粒子径を有する粒子が得られることについては、本研究により再現性が確認でき、実験計画の導入部分に大きな問題がなかった。 w/o/wエマルション型エリスロポエチン含有PLGAナノスフェアを調製し、外水相にキトサンまたはカチオン性界面活性剤を添加することで30-100nmの整粒性に富んだ表面構造の滑らかな粒子を得ることに成功した。 キトサン添加w/o/wエマルション型エリスロポエチン含有PLGAナノスフェアは、キトサン非添加製剤と比較し、高いBBB透過性を示した。 薬物の初期放出の抑制の工夫の一つとしてPLGAの自己修復作用を利用した製剤調製を行い、乳化後の撹拌過程においてガラス転移点以上の温度で撹拌を行うことで、粒子表面に生じる微細な細孔が閉鎖し、薬物放出が抑制されることを見出した。 平成25年度はin vitroにおける製剤調製と調製製剤の脳移行性の評価を終了したことから、研究計画はおおむね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画・方法は、以下の通りである。平成25年度はほぼ予定通りに研究が進捗していることから、当初の計画通りの内容を実施予定である。 平成26年度は、平成25年度にin vitroで行った実験について動物を用いて検証する。まず一つ目は、動物体内での薬物動態を評価するため血中濃度の測定を行う。二つ目は、分子イメージングを利用し、製剤を皮下投与後、粒子の脳内分布について検証する。三つ目は、低酸素性・虚血性脳症(HIE)モデル動物を使用し水迷路課題による学習能改善評価と脳組織切片を用いた免疫染色による脳保護作用を検証する。 以上、3項目について検証を行い、平成26年度は本研究の最終年度として2年分の研究成果を報告である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初平成25年度に予定していたナノスフェアの調製回数を減らすことができたので、調製回数の減少に伴いエリスロポエチンの購入量が減少したため。 平成26年度は、動物実験におけるエリスロポエチン含有ナノスフェア製剤の体内動態や薬効評価を行う。よって、主に動物・試薬代に使用し、研究成果発表のための学会参加のための旅費に使用する。平成26年度使用予定の156万円のうち、物品費に100万円、旅費に40万円、その他に16万円を使用する予定である。
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