2013 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養を用いた下垂体前葉細胞の新規機能の探索とその調節機序の解明
Project/Area Number |
25860147
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
塚田 岳大 自治医科大学, 医学部, 助教 (50596210)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 下垂体前葉 / 濾胞星状細胞 / 3次元培養 / 細胞外マトリックス / コラーゲン / ラミニン / 組織構築 / TGFbeta |
Research Abstract |
本研究の目的は、二つの強力なツール、1)Hanging drop法を用いた下垂体前葉細胞の3次元培養と2)濾胞星状細胞特異的にGFPタンパクを発現するS-100β-GFP ratを組み合わせて、下垂体の組織構築における濾胞星状細胞の役割を解き明かすことにある。1)の3次元培養に関しては、平成23年度に採択された若手研究B(課題番号:23790233)の補助のもと、培養法の確立を行い、国際誌に発表を行っている。 平成25年度は、蛍光標識細胞分取法を用いて濾胞星状細胞とそれ以外の前葉細胞に分離したのち、濾胞星状細胞の存在下、非存在下で3次元培養を行い、細胞塊の組織構造や分子機序の違いを組織学的、分子生物学的に調べた。下垂体前葉細胞からFS細胞のみを取り除いて細胞培養すると、細胞外に基底膜の主成分であるラミニンの沈着がなくなり、ラミニン免疫陽性細胞が出現するという大変興味深い現象をみつけた。免疫染色を用いて、ラミニン免疫陽性細胞を同定したところ、前葉ホルモンを産生するLH細胞であることがわかった。これまで、濾胞星状細胞とLH細胞間の相互作用を示唆する報告はあったが、濾胞星状細胞がゴナドトロフで合成されるラミニンの放出に関与しているという報告は初めてである。現在、これらの研究結果をまとめ、投稿にむけ準備をしている。 また、平成25年度後半には、濾胞星状細胞で合成されるコラーゲン合成因子の同定を行った。我々は、コラーゲン合成因子のひとつであるTGFb familyに着目した。In situ hybridizationを用いて3種類あるTGFbのうちTGFb2が濾胞星状細胞で特異的に発現していることを明らかにした。TGFb2に関するデータは、第38回日本比較内分泌学学会(宮崎、11月)、第119回日本解剖学会(栃木、3月)ですでにポスター発表を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験として、濾胞星状細胞を含まない細胞塊には基底膜の主成分であるラミニンの細胞外蓄積が見られず、ホルモン産生細胞であるLH細胞に強い免疫陽性反応がみられることがわかっていた。平成25年度では、この実験データの裏付けをするため、濾胞星状細胞の割合を0, 5, 10, 20%と変えて、ラミニン免疫陽性細胞の数をNIHの画像解析ソフトImageJを用いてカウントした。その結果、濾胞星状細胞の割合が増えれば、ラミニン免疫陽性細胞の数が有意に減少することがわかった。次に、濾胞星状細胞がLH細胞のラミニン合成に関与しているかを調べるため、real-timePCRを行ったが、その発現量に変化はなかった。そこで、濾胞星状細胞がLH細胞からのラミニン放出に関与していると仮設を立て、濾胞星状細胞を含まない細胞塊をconditioned medium(濾胞星状細胞のみを培養した培養液)で培養し、ラミニン免疫陽性細胞の数をカウントした。すると、conditioned mediumを入れた細胞塊中のラミニン免疫陽性細胞の数が有意に減少した。これは、濾胞星状細胞からの液性因子がLHからのラミニン放出に関与することを示唆する大変興味深いデータである。現在、その液性因子の同定を行っている。 この研究結果については、第87回日本内分泌学会(福岡、2014年4月)のシンポジウムで発表している。現在、投稿にむけ準備をしており、大幅な遅れや実験計画の変更はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備実験から、濾胞星状細胞を含まない細胞塊でコラーゲン産生細胞である周皮細胞のコラーゲン合成が減少し、いっぽう周皮細胞の活性を示すデスミンやRGS5の発現量も減少することがわかっている。平成26年度は、この濾胞星状細胞と周皮細胞の細胞間相互作用を調べる。コラーゲン合成において申請者が注目するもっとも有力な候補分子はTransforming growth factor beta(TGFb)である。TGFbは古くから、コラーゲン合成を促すことで知られている。予備実験では、3種類のTGFb (TGFb1-3)のうち、TGFb2が濾胞星状細胞特異的に発現していることをRT-PCRで確認している。また、microarrayのデータからTGFbに関わる関連分子も濾胞星状細胞で発現していることがわかっている。これらのデータを踏まえ、周皮細胞におけるTGFb2の影響を調べていく。まず、TGFb2の受容体であるTGFbr1, 2が周皮細胞で発現しているかin situ hybridizationを用いて調べる。受容体が周皮細胞で確認された場合、TGFb2を培養液に添加し、定量PCRによりコラーゲン合成量を調べる。さらに、TGFb2の細胞内シグナル分子であるSmadのリン酸化をWestern blotting法を用いて調べる。また、周皮細胞に受容体発現が見られなかった場合も、各種ホルモンや血管内皮細胞のマーカーを用いてTGFb2受容体を発現している細胞を同定する。それによりTGFb2を介した新規の細胞-細胞間を見つけることができる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、コラーゲン合成を促進する因子を同定に、TGFb2 familyの研究を先行して行った。そのため、予定していた2次元電気泳動の実験は次年度に行うことにした。余剰金はそのためである。 2次元電気泳動を実施て、TGFb family以外のコラーゲン合成促進因子を同定する。
|
Research Products
(11 results)