2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン脱メチル化酵素Fbxl10による精細胞の発生制御機構の解明
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25860157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小沢 学 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80608787)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精子形成 / 細胞周期 / エピジェネティクス / 生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒストンH3K4およびK36の脱メチル化酵素であるFbxl10の精子形成における機能を明らかにすることを目的として、Fbxl10ノックアウトマウスモデルを用いて詳細に解析した。その結果、Fbxl10を欠損しても弱齢時においては野性型と同様の精子形成能を示した一方で、7ヶ月齢になると有意に多くの精細管で精子形成の異常が観察された。また、マイクロアレイを用いて未分化精原細胞のトランスクリプトーム解析を行った結果、3ヶ月齢のFbxl10ノックアウトマウスから回収した未分化精原細胞では同月齢の野性型と比較して多くの遺伝子の発現パターンが異なることが明らかとなった。また、興味深いことに3ヶ月齢のFbxl10欠損未分化精原細胞におけるトランスクリプトームパターンは1年齢の野性型マウスから回収した未分化精原細胞の遺伝子パターンとの相同性が高いことが明らかになり、Fbxl10の欠損に起因して未分化精原細胞では異常な早期加齢が生じていることが示唆された。さらに、培養精原幹細胞を用いた体外培養モデルにおいても、細胞周期の抑制的制御因子でありまた加齢マーカーとして広く認知されるCDKIの上昇ならびに細胞分裂周期の遅延が観察された。このFbxl10欠損による精原細胞の分裂遅延は、in vivoの精巣においても確認された。以上の結果より、Fbxl10は精原細胞の加齢を抑制することで持続的な精子形成を調整するという新たな生理機序が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初は順系マウスを用いてFbxl10欠損マウスを得ようと試みていたものの、胎生致死の表現型が強く十分な量の成体マウスを確保することができなかった。そのため一旦別系統のマウスと交配させ雑種を作成したところ胎生期の致死性が弱まることがわかったことから、現在は雑種の同腹交配によってマウスコロニーを維持し研究に使用している。この、当初予定していなかった雑種マウスの作成期間分、研究に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
論文作成をする上で必要と思われる基礎データはほぼ揃っているので、早急にデータを纏め論文を執筆し発生学分野の国際査読誌に投稿する。また、Fbxl10はホモログ遺伝子が存在し、精巣で高発現を示すことが予備解析において明らかであるので、今後はFbxl10ならびにそのホモログ遺伝子が精子形成においてどのような役割を果たしているのかについて、詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
現在までの達成度の欄で示したように、研究開始当初は順系マウスを用いてFbxl10欠損マウスを得ようと試みていたものの、胎生致死の表現型が強く十分な量の成体マウスを確保することができなかった。そのため一旦別系統のマウスと交配させ雑種を作成したところ胎生期の致死性が弱まることがわかったことから、現在は雑種の同腹交配によってマウスコロニーを維持し研究に使用している。この、当初予定していなかった雑種マウスの作成期間分、研究に遅延が生じたため研究費の繰越を行なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定通り、マウスの維持費や消耗品、分子生物学的な解析キットの購入および論文の掲載費用に使用する
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