2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな心肥大調節経路としての核内Ca2+動態とCa2+センサーNCS-1の意義
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25860174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中尾 周 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30646956)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞内シグナル伝達 / 心筋細胞 / 心肥大 / カルシウム / カルシウムセンサー / イノシトール三リン酸受容体 |
Research Abstract |
心肥大は慢性心不全の進行に密接に関わっていることから,その成り立ちを解明することは病態生理学的に重要である。近年,心肥大をもたらす分子メカニズムの1つとして,心筋細胞の局所でのCa2+ 濃度の上昇が,Ca2+ 依存性の心肥大シグナルを活性化することにより遺伝子発現を調節することが分かってきた。例えば、ホルモン刺激などにより核内Ca2+レベルが上昇し、これが心肥大形成に寄与することが報告されているが、その詳細な分子機構は不明である。一方、当グループではCa2+結合タンパク質neuronal calcium sensor-1(NCS-1)が心肥大シグナル調節に関与していることを見出だしている。そこで本研究では,心筋細胞における肥大シグナル経路として‘核内’のCa2+ 制御機構に注目し、NCS-1が核内Ca2+ 濃度調節を介して心肥大形成へ寄与しているかどうかをNCS-1欠損マウスを用いて細胞レベルおよび個体レベルで検証した。 マウス新生児の初代培養心筋細胞を用いて、蛍光Ca2+ イメージング法,蛍光免疫染色法,細胞分画法,および分子間相互作用解析を実施した。その結果、1)NCS-1欠損マウスにおいて,受容体刺激によって誘発した細胞質内/核内Ca2+ 放出は野生型マウスの心筋細胞よりも少なく,2)この核内Ca2+レベルの上昇は細胞内Ca2+ 放出チャネルであるイノシトール三リン酸受容体(IP3R)を介して起こること;3)NCS-1はIP3Rと心筋細胞の核周囲領域で共局在していること,4)NCS-1とIP3Rの相互作用は受容体刺激後に増加することを見出だした。このことは、NCS-1はIP3Rとの相互作用を介して心筋細胞の核内のCa2+ 濃度を調節する因子であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,以下の3つのテーマの解明を目指している。本研究の達成度は当初の見込みよりもやや遅れはあるが,残りの実験を併行して進めていくことで計画全体の遂行は可能ではないかと考えている。 研究①(平成25年度の計画):心肥大形成と核内Ca2+ 動態との関連性を明らかにするために,心肥大刺激による心筋細胞の核および細胞質内のCa2+ 動態の変化をそれぞれ同時に測定できる蛍光Ca2+ プローブGECO を用いて解析する。さらに,各種Ca2+ 輸送関連分子に対する特異的な阻害薬を用いて,核内Ca2+ 動態の制御に関わる分子群を見出す;研究②(平成25年度の計画):マウス心筋細胞において,心肥大に関わる核内Ca2+ シグナル調節へのNCS-1の寄与を調べるために,研究①の実験をNCS-1欠損マウスでも実施し,野生型マウスでの結果と比較・解析する;研究③(平成26年度の計画):慢性的な心肥大刺激が核内Ca2+ 動態へ与える影響を明らかにするために,心肥大モデルマウス由来の単離心筋細胞における核内および細胞質内のCa2+ 動態を詳細に解析する。 これまで研究①および研究②の前半が終了し,現在その成果をまとめると同時に研究②の後半部分に取りかかっている。しかし研究②に関して,核内Ca2+シグナル調節にNCS-1が寄与している可能性は分かったが,核内Ca2+シグナルの下流にあるタンパクのリン酸化や細胞肥大に関するパラメータについて予想された結果が得られていない。そのため,核内Ca2+ シグナルの実験的なコントロール方法や核内Ca2+ シグナルの影響の別の解析方法を現在検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果から研究の方向性に大きな進路変更の必要性は生じていないため,研究②および研究③で計画している実験を順次進めていく。 研究②では,NCS-1欠損マウスを用いて、核内Ca2+ 動態を増強あるいは抑制したときの心肥大シグナルへの影響を調べる計画であり,具体的には,心筋細胞サイズの計測,心肥大関連タンパク質およびmRNAの発現の解析,転写因子の活性化の解析などが含まれる。このように解析するパラメータが多いために全てを遂行するには時間を要するが,順次実験を進めていく予定である。 研究③の心肥大モデルマウスおよびモデルマウスの単離心筋細胞を用いた検討では,慢性的な心肥大刺激が核Ca2+ 動態にどのような変化をもたらすかを調べる目的で実施する。現段階で,心肥大モデルの作製に必要な器具・装置は準備できており,また成体マウス心臓からの心筋細胞の単離も習得済みのため,計画している動物実験ならびに細胞実験を順次進めていく。また,核内Ca2+ 動態へのNCS-1の寄与がCa2+ 依存性かどうかを確かめるために,Ca2+ 親和性の低いNCS-1変異体を心筋特異的に高発現する遺伝子改変マウスでも併行して実験を進める。なお、このマウスは既に作製済みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に若干の遅れが生じており、平成25年度に実施を計画していた実験のための予算を執行しなかった。また、出席する学会や研究打合せが予定よりも少なく、投稿予定だった論文も未提出のため、出張および投稿にかかる費用が執行されていない。 1)平成25年度に計画していたが未実施であった実験のために執行する。2)これまでの研究成果発表のための国際学会への出席に執行する。3)論文投稿にかかる費用として執行する。
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Research Products
(4 results)